生物系特定産業技術研究支援センター
(24) 九州における飼料生産組織、TMRセンター、子牛育成センターが連携する地域分業化大規模肉用牛繁殖経営の実証
事業名 | 攻めの農林水産業の実現に向けた革新的技術緊急展開事業 |
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実施期間 | 平成26年~27年(2年間) |
研究グループ (研究終了当時) |
農研機構 九州沖縄農業研究センター、鹿児島県農業開発総合センター畜産試験場、福岡県農林業総合試験場、長崎県農林技術開発センター、熊本県農業研究センター畜産研究所、大分県農林水産研究指導センター、宮崎県畜産試験場、広島県立総合技術研究所畜産技術センター、(株)藤原製作所、(株)NTTドコモ、家畜改良センター鳥取牧場、鹿児島県大隅地域振興局、鹿児島きもつき農業協同組合、鹿児島県経済農業協同組合連合会 |
作成者 | 農研機構 九州沖縄農業研究センター 服部 育男 |
連絡先 | 農研機構 九州沖縄農業研究センター 服部 育男 電話 : 096-242-7746 メール : ih4111[アット]affrc.go.jp ※[アット]を@に置き換えてください 農研機構 九州沖縄農業研究センター 企画部 産学連携室 電話 : 096-242-7682 メール : q_info[アット]ml.affrc.go.jp ※[アット]を@に置き換えてください |
1 研究の背景
飼料高騰や多頭飼育により、肉用牛繁殖経営では自給飼料の安定的確保、作業労働競合の軽減が急務である。そのため、生産部門の専業化・外部化を可能とする地域肉用牛連携分業システムが求められている。
2 研究の概要
鹿児島県大隅地域において、飼料生産組織には周年飼料栽培技術、TMRセンターには食品副産物の利用技術、繁殖管理では無線分娩監視システム、育成牛には強化哺育を導入し、技術の有効性を検証する。
3 研究期間中の主要な成果
- 飼料生産部門においては不耕起栽培による3毛作体系の導入により、年間の実乾物収量は約4割増収した。これらの収量増により、慣行を上回る労働報酬と収益性が確保できることが実証された。
- 繁殖管理部門においてICTによる分娩監視技術導入により、500頭規模で分娩事故は実質0%となった。
- 子牛育成部門においては強化哺育技術の導入により、哺乳期間が24日短縮され、出荷日齢も10日短縮された。これら繁殖管理部門、子牛育成部門への新技術導入により、子牛出荷頭数・販売額は増加した。
4 研究終了後の新たな研究成果
- 黒毛和種において歩数計により明瞭なスタンディング発情だけでなく、不明瞭な鈍性発情の検知が可能である。さらに、検知した発情の開始時間より推定される授精適期での人工授精により、鈍性発情を示した牛においても妊娠させることができる。(Hojo et.al. Anim Sci J. 89:1067-1072 (2018))
公表した主な特許・品種・論文
Sakatani, M. et al. Vaginal temperature measurement by a wireless sensor for predicting the onset of calving in Japanese Black cow. Theriogenology 111,19-24 (2018).
5 開発した技術・成果の実用化・普及の実績及び今後の展開
(1) 実用化・普及の実績
- 不耕起栽培利用による飼料作物の作付け回数の増加、実証地での栽培面積として20ha
- 分娩監視システム(モバイル牛温恵)利用導入件数 農家約2,000戸
- 強化哺育導入個数 鹿児島県内で78戸
(2) 実用化の達成・普及の要因
いずれの技術も本事業開始時には品種登録、技術開発、商品化が進んでいたものであり、本事業で実証成果を得たことで、普及が進んだと考えられる。
(3) 今後の開発・普及目標
不耕起栽培技術は堆肥利用技術を開発し2023年度までに100ha、 強化哺育は哺乳ロボットでの利用技術を開発し、鹿児島県内での500戸の導入を目標とする。
6 開発した技術・成果が普及することによる波及効果及び国民生活への貢献
発情発見技術については、ニーズの高さが認識され、活動量センサー等、ICT技術の導入が進みセンシング技術を用いた商品が開発されるなど、関連分野での成果、他分野との連携が進んだ。