生物系特定産業技術研究支援センター

(24029) 家畜伝染病発生時におけるまん延防止のための殺処分家畜等輸送技術の確立

事業名 農林水産業・食品産業科学技術研究推進事業(実用技術開発ステージ)
実施期間 平成24年~25年(2年間)
研究グループ
(研究終了当時)
太陽工業(株)、京都府農林水産部畜産課(南丹、中丹家畜保健衛生所、畜産センター)、京都産業大学
作成者 太陽工業(株) 山野辺 敦
連絡先 太陽工業(株)資材事業統括本部 技術部 品質管理課 山野辺 敦
電話 : 06-6306-3037
メール : ya001911[アット]mb.taiyokogyo.co.jp ※[アット]を@に置き換えてください

1 研究の背景

家畜伝染病予防法において患畜・疑似患畜の死体の処分方法は焼・埋却と規定されているが、都市近郊等では農場周辺地での埋却地確保が困難である。平成23年度に農林水産省消費・安全局が開発した移動式レンダリング装置の利用により、埋却以外の処分も可能となった。農場からレンダリング装置など処理する場所までを安全に輸送でき、万一に備えて、備蓄可能な輸送資材と輸送システムの開発が急務となった。

2 研究の概要

家畜伝染病発生時において、ウイルス等病原体の散逸を完全に防止できる完全密閉型容器と、夏期の高温期や処理まで一時的に保管を要する場合に殺処分家畜から発生するガスを透過し、ウイルスは漏らさないガス透過型容器(備蓄可能な輸送資材)の開発。開発した資材による殺処分家畜等の収容、保管、輸送の各作業を安全かつ効率的に実施する技術の開発と輸送マニュアルの作成。

3 研究期間中の主要な成果

  • 密閉型容器の材料機能を評価し、収容作業性・密閉性の観点から最終容器として仕様を固めた。また、燃焼試験による安全な処分、保管調査にてウイルスの非通過性を確認している。
  • ガス透過型容器としてのガス抜き弁を開発し、ガス透過性の確認と保管調査によるウイルス非通過試験を実施。良好な結果を得た。さらに、焼却試験においてガス透過型容器は有害物質の発生がないことを確認。
  • 密閉型容器、ガス透過型容器を収容する金属枠を開発した。また、収容・輸送を実証した輸送調査においてウイルスの漏出がないことを確認し、収容・輸送の作業手順を確立後、冊子版と動画版のマニュアルを作成。

4 研究終了後の新たな研究成果

防疫バッグのEVA外袋に小型家畜を収容できる汎用性の高い小型アルミ内袋と小型保護内袋の仕様を決定。小型アルミ内袋へ直接溶着できるガス抜きフィルターPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)膜を開発。試験室レベルでネコカリシウイルスが通過しないことを確認。今後、現場での検証やマニュアル作成の予定。

公表した主な特許・品種・論文

特願2016-514939

5 開発した技術・成果の実用化・普及の実績及び今後の展開

(1) 実用化・普及の実績

  • 販売件数 : 国2件、大学1件、都府県10件、団体12件(合計25件)
  • 販売額 : 29,127,900円
  • 販売数 : 防疫バッグ386袋、アルミ内袋388枚、保護材378セット、ガス抜き弁452個、金属フレーム3個

(2) 実用化の達成・普及の要因

従来にない観点での家畜防疫資材であることから平成26年の3者合同記者発表と府庁での研修会(29都道府県150名参加)で、注目・期待された。また、展示会・学会・シンポジウムなどでの展示、掲載紙への投稿などにより、全国的に認知度が高まり、各都道府県での防疫演習時に使用され取り扱い説明会を実施した。

(3) 今後の開発・普及目標

防疫演習での説明会(小型家畜用も含めて)について、2020年10件、3~5年後に20件の普及を目指す。さらに、防疫バッグの備蓄について、全国で2020年1,000袋、3~5年後に10,000袋の備蓄を目指す。

6 開発した技術・成果が普及することによる波及効果及び国民生活への貢献

過去の発生では、処分頭数が約30万頭に及び、経済的損害は2,350億円と試算されている。防疫バッグが、1万袋備蓄・活用されることで、早期のまん延防止が期待できるととともに、経済的損害を大きく低減できる。このような早期のまん延防止は畜産農家が安心して生産することや国内畜産物の安全・安心の確保に貢献。

九州における飼料生産組織、TMRセンター、子牛育成センターが連携する地域分業化大規模肉用牛繁殖経営の実証