生物系特定産業技術研究支援センター 研究資金業務

イノベーション創出基礎的研究推進事業(終了)

2012年度 終了時評価結果

二重変異体を用いた新規構造澱粉米の開発

研究代表者氏名及び所属

藤田 直子(秋田県立大学 生物資源科学部)

総合評価結果

優れている

評価結果概要

本課題は、イネの澱粉生合成に関わる酵素アイソザイム遺伝子の二重変異体を作出し、それらの胚乳澱粉の顆粒構造や鎖長分布などの分子構造並びに澱粉物性を調べることによって、澱粉の生合成メカニズムおよび各アイソザイム遺伝子の機能を解明するとともに、親変異よりもユニークな構造および物性をもつ二重変異澱粉の利用適性を検討することによって、新たな食品、添加剤、工業品の開発に資する知見を得ようとしたものである。

まず、多数ある澱粉生合成関連アイソザイム変異体間の二重変異体を作出するための効率的な選抜マーカーを開発し、これを用いて二重変異体26系統および組換え体3系統を作出した。ついで、これら系統と親変異体の酵素、澱粉構造および物性を解析し、SSIIIaの欠損にインディカ型のGBSSIを組み合わせると高アミロース澱粉を生産できること、ΔSSIIIa/ΔSSIVbは球形澱粉粒を形成すること、実用品種である ‘あきたこまち’や‘秋田63号’においても導入した二重変異デンプン形質が保持されることなどを示すとともに、特徴的な澱粉構造を呈する二重変異体の大規模栽培・澱粉の大量調製を行ってそれらの物性・利用特性を調べ、具体的な食品試作を進め、さらに、澱粉生合成関連アイソザイムの機能およびそれらが澱粉構造・物性に与える影響をカタログ化した。このように、本課題では、科学的にも実用的にも興味のある成果が多数得られており、その成果は今後の米澱粉科学分野の研究の発展に大きく貢献し、生物系特定産業にも大きく寄与するものと期待される。特筆すべきは、実用面にかなりの精力をつぎ込みながらインパクトファクター5以上の雑誌に多くの論文を掲載したことである。