生物系特定産業技術研究支援センター 研究資金業務

イノベーション創出基礎的研究推進事業(終了)

2012年度 終了時評価結果

低エネルギー高嗜好性油脂を含む食品の実用化に関する研究

研究代表者氏名及び所属

  伏木 亨(国立大学法人京都大学)

研究参画機関

  国立大学法人京都大学
  江崎グリコ株式会社 

総合評価結果

  優れている

評価結果概要

京都大学と江崎グリコ株式会社の共同研究により高嗜好性低カロリー脂肪酸を添加した食品の製造と市場導入という最終的な目標を達成している。同時に油脂の嗜好性メカニズムの解明を進めており、実用化に当たっての科学的な裏付けができた。

脂肪酸の口腔内受容機構の解析を行い、従来の食用油脂受容と同じ仕組みであること及び脂肪酸の摂取によって反応する神経系は、従来の食用油脂を使用した食品と同じであることを示すなど、油脂の高い嗜好性のメカニズムの解明に大きく貢献した点は、学術的に高く評価されるものである。また、食品のおいしさの評価系を確立し、食品への脂肪酸添加によって嗜好性を高め、低エネルギー食品開発の可能性を他に先駆けて公表した成果は大きい。発表論文及び学会発表の数も多く、これらの成果は、当該分野の研究に重大なインパクトを与え、当該分野の水準の高い学術誌に掲載されたことは高く評価される。

脂肪酸を使用することによって低カロリー食品の実用化がアイスクリームにおいて実現している。脂肪の一部代替として脂肪酸を添加することにより、食品のおいしさを保持したまま低カロリー化を図ろうとする試みは、成人病対策やダイエット食品開発を指向する食品業界においては魅力ある方法である。

ただし、脂肪には食品の口当たり、風味など、味以外の食感等に与える効果が知られており、食感等を保つための新たな技術開発も同時に必要になるであろう。食品のカロリーコントロールにはさまざまな方法が開発されており、脂肪酸を使用することによる優位性を主張していくことが今後必要かと思われる。また、国際特許出願にも努めていただきたい。