生物系特定産業技術研究支援センター 研究資金業務

イノベーション創出基礎的研究推進事業(終了)

2012年度 終了時評価結果

ブタ凍結精液の受託生産を目指した精液輸送液、人工精奬の開発

研究代表者氏名及び所属

島田 昌之(広島大学)

研究参画機関

広島大学
大分県 農林水産研究指導センター

総合評価結果

  優れている

評価結果概要

 ブタの凍結精液を用いた人工授精は、高品質で安全な豚肉を低コストで生産することを可能とする技術であるが、高い繁殖成績の達成が課題となっている。本研究は、広島大学が基礎研究、大分県農林水産研究指導センターが実証的研究を分担し、基礎研究成果を実用化技術開発へとつなげる有機的な体制を構築して進めた。本研究で開発された「精子常温輸送液、液状精液保存液」は常温輸送後においても90%以上の種豚から良好な凍結精液を作出可能となり、特許出願された。また、従来の凍結精液に含まれる卵黄やグリセロールが人工授精後の子宮内の環境を大きく変化させ、劇症性炎症反応を引き起こすことを明らかにし、これをコルチゾール等の炎症抑制剤により改善し、高い繁殖成績を得ることに成功した。これら成果は国内外の畜産分野で高く評価されている。生産者への調査により、凍結精液の人工授精を普及するための問題点を把握し、生産者からの要望の高かった精巣上体精子の凍結保存、人工授精法の開発へとつなげるなど、実際に生産現場で利用される技術を開発したことは、評価に値する。さらに、「精子常温輸送液、液状精液保存液」開発の成功を、大分県の県事業化、広島大学発ベンチャーの前倒し設立につなげて、凍結精液の受託生産サービスを開始するなど、我が国の養豚業に貢献する技術開発が十分に行われたと判断し、高く評価する。

なお、得られた成果の原著論文発表を期待する。また、今後、この受託サービスの対象を銘柄豚生産者や種豚場など大規模農場のみならず中小規模農場にまで広め、日本の豚肉生産を全体的に底上げするようなビジネスプランの提示を期待する。