生物系特定産業技術研究支援センター 研究資金業務

イノベーション創出基礎的研究推進事業(終了)

2013年度 終了時評価結果

不凍ペプチドを用いた牛生殖細胞と初期胚の超高性能保存液の開発

研究代表者氏名及び所属

青柳 敬人 (全国農業協同組合連合会ET研究所)

研究参画機関

  全国農業協同組合連合会ET研究所
  独立行政法人産業技術総合研究所北海道センター

総合評価結果

  当初目標を達成

評価結果概要

 牛の「生殖細胞(卵子、精子)・初期胚の低温保存液の開発」と「不凍ペプチド(CPP3)の細胞・分子レベルでの機能解明と高純度CPP3の大量生産ラインの開発」を達成目標としている。
 CPP3大量発現・精製法を確立して、CPP3の3次元分子構造を決定し、実験を安定して行うことで、CPP3と細胞膜の相互作用に温度依存性があることを明らかにするとともに、胚を30°Cの高温域で前培養するというチルド保存に有効な手法を確立して、10日間の牛初期胚チルド保存によって、妊娠例を得る等の成果を得た。また、チルド精子を利用した現場実証試験を遠隔地間で実施し、低受胎牛及び暑熱環境下における受胎率改善に効果があることを立証した。さらに、CPP3の安全性を実証した。
 学術的には、インパクトファクター2以上の国際誌へ5報投稿し、そのうち4報が既に掲載された。また、国際学会への招待講演やラウンドテーブルでの口頭発表依頼を受けるなど、高評価を得ている。当初の目標の一つである「胚の冷蔵保存」及び「不凍タンパクの細胞・分子レベルでの機能解明」の一部についても評価される。
 生物系特定産業創出への寄与については、牛初期胚や精子のチルド保存により、胚や精子の空輸が可能なことを示し、開発したシステムの活用を図ることで、生産現場での夏期の暑熱ストレスにより低下している受胎率向上の可能性や前述の低受胎牛対策にも有用なことを示した。
 ただし、輸送キットは安価でシンプルなものが汎用性の面から求められ、現行ではやや問題が残る。また、CPP3の生産に関しては、高純度CPP3を安価で簡単に大量生産できるラインの開発が望まれる。
 今後、CPP3の効果の更なる確認に努めるとともに、本技術を普及させることで、これらの成果を活か した畜産への貢献を期待する。