研究代表者氏名及び所属
兼松 聡子(独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 果樹研究所)
研究実施期間
平成20年度~24年度(5年間)
研究の趣旨・概要
動物や植物のウイルス病は広く知られているが、糸状菌に感染して菌を病気にするウイルスもある。我々は果樹類の難防除土壌病原菌である紋羽病菌に感染して病原力を低下させるマイコウイルスを見いだし、これらを利用した生物防除法(ヴァイロコントロールと提唱)の開発を目指している。ヴァイロコントロール因子となるマイコウイルスは、一般に菌糸融合により伝搬するが、遺伝的に異なる菌株間で生じる細胞質不和合性は、マイコウイルス導入の障壁となる。そこで本課題では、細胞質不和合性の機構解明とマイコウイルスの分子生物学的解析を行い、菌とウイルス両面からの基盤研究に基づいたヴァイロコントロール因子導入法を開発する。
研究項目及び実施体制(()は研究担当者)
- 細胞質不和合性の機構解明
(国立大学法人神戸大学農学研究科 朴 杓允、同自然科学系先端融合研究環 池田健一) - マイコウイルスの分子生物学
(国立大学法人岡山大学資源生物科学研究所 鈴木信弘) - アグロバクテリウム法によるウイルス発現株の作出
(公立大学法人県立広島大学生命環境学部 森永 力) - マイコウイルスの導入法開発とウイルス感染菌株の特性解析
(独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構果樹研究所 兼松聡子、中村 仁、佐々木厚子)
期待される成果、効果
細胞質不和合性に阻害されることなく任意の菌株にヴァイロコントロール因子を導入することが可能となる。本研究の成果は紋羽病菌による被害防止のみならず、他の糸状菌/マイコウイルスの系にも応用可能であり、マイコウイルス学に新展開をもたらす。また、ヴァイロコントロールの実用化に向けた技術的基盤となり、環境保全型農業の推進に貢献する。