研究代表者氏名及び所属
村上 昇(国立大学法人宮崎大学農学部)
研究実施期間
平成20年度~24年度(5年間)
研究の趣旨・概要
我国の畜産物の自給率を上げるには、土地や人手の不足の現状から考えて、家畜1頭1頭の繁殖率・成長/体重・ミルク生産量、肉質など有益な能力や性質をさらに向上させることが極めて重要である。しかし、動物には巧妙な恒常性維持機構があり、単に餌を増やしても、あるいは摂食量を増加できたとしても殆ど増体やミルク増産には繋がらない。一方、遺伝的にある種の恒常性を破綻した動物は極度の肥満やサイズの大きい個体となる。このような個体の生理機能や恒常性破綻機能を解析すれば、逆に人為的に肥満やサイズの大きな個体を作出できる。さらに、我々は幾つかのホルモンが、摂食、代謝、運動、熱生産(エネルギー消費)あるいは生体リズムなどの複数の機能に同時に作用し、個体の恒常性そのものに関わるものであることを見いだしている。このような物質を上手く応用すれば恒常性を凌駕し、家畜の増体やミルク生産の向上が可能になる。本研究は、摂食中枢、運動中枢・体温(熱生産)中枢、生体時計あるいは自律神経中枢などが、どのようなクロストークを介して恒常性を維持しているのか、また、中枢と末梢組織間ではどのようなクロストークを介した恒常性維持機構が存在するのか、を解明する。
研究項目及び実施体制(()は研究担当者)
- 動物の摂食・代謝・運動・熱生産のクロストークの解析
(国立大学法人宮崎大学農学部 村上 昇) - グレリンによる自律神経調節のメカニズム解明と、動物の低ストレス化への応用
(久留米大学分子生命科学研究所 児島将康) - 食行動を制御する臓器間クロストーク機構の解明
(国立大学法人宮崎大学フロンティア科学実験総合センター伊達 紫 )
期待される成果、効果
摂食、代謝、運動および熱生産を維持する恒常性機構を解明し、これを人為的に操作することで、家畜の摂食量の増加、栄養効率の増加、ミルク生産量の向上、成長速度の促進および肉質の向上につなげる。