生物系特定産業技術研究支援センター 研究資金業務

イノベーション創出基礎的研究推進事業(終了)

2008年度 採択された研究課題

ナノ病原体の病原性因子の構造解析と治療薬開発に向けた基礎研究

研究代表者氏名及び所属

難波 成任
難波 成任(国立大学法人東京大学大学院農学生命科学研究科)

研究実施期間

平成20年度~24年度(5年間)

研究の趣旨・概要

一般細菌より小さく、昆虫によって媒介され、植物の篩部組織に局部感染し病気を引き起こすウイルスサイズの植物病原微生物(ナノ病原体)は、農業生産に壊滅的な被害をもたらしており、その解決は非常に困難である。また地球気候変動に伴う温暖化の影響で、ナノ病原体は媒介昆虫と共に北上しつつあり、その被害拡大は我が国のみならず世界各国で深刻な脅威となっている。 本研究では、ナノ病原体のなかで最も研究の進んでいるファイトプラズマをモデルに、その病原性因子を単離し構造解析を試みるとともに、病原性発現のシグナルネットワークを解明する。

用語解説

ファイトプラズマは植物の篩部細胞内に局在する絶対寄生性の植物病原細菌で、700種以上の植物に感染し、感染植物に萎縮・叢生・黄化・花の葉化や緑化などの形態や生理的異常を伴う特徴的な病徴を引き起こす。ヨコバイなどの昆虫により媒介され感染を拡大させる。その細胞サイズ(0.1-0.7 μm)やゲノムサイズ(0.5-1.3 M)は細菌の中で最も小さく、一般細菌とは区別される。系統学的には動物マイコブラズマと近縁で、植物マイコプラズマとも呼ばれる。

研究項目及び実施体制(()は研究担当者)

  • 病原性因子の単離とその機能解析
    (国立大学法人東京大学大学院農学生命科学研究科 難波成任、大島研郎、山次康幸)
  • 病原性発現に関わるシグナルネットワークの解明
    (国立大学法人東京大学大学院農学生命科学研究科 難波成任、濱本 宏、大島研郎)

期待される成果、効果

本研究により、有効な治療・防除・予防薬剤の開発など、ナノ病原体対策確立に向けた分子基盤の構築につながることが期待される。また、ナノ病原体の病徴誘導メカニズムに関する知見をもとに、植物の形態形成を制御する新規育種素材の開発など、関連分野への幅広い波及効果が期待される。

ナノ病原体の病原性因子の構造解析と治療薬開発に向けた基礎研究