研究代表者氏名及び所属
間 陽子(独立行政法人理化学研究所 基幹研究所)
研究実施期間
平成21年度~25年度(5年間)
研究の趣旨・概要
地方病性牛白血病は牛白血病ウイルス(BLV)により惹起される悪性Bリンパ腫であり、発症すると必ず死の転帰をとることから、畜産界に与える打撃は深刻である。またBLVは世界的に蔓延しており、その被害は拡大の一途を辿っているが、個体差が原因で一般的に使用可能なワクチンの開発には至っていない。申請者らはこの個体差の原因の一つがウシ主要組織適合抗原(MHC)クラスII分子の多型性であることを突き止め、BLV体内ウイルス量を上昇させ、白血病発症を抑制する感受性アリルと、逆の効果を持つ抵抗性アリルを見出した。
本研究の目的は、MHCの多型性によるワクチン応答性の違いに着目して、これまで開発に成功していない、感受性アリルを持つ、低免疫応答性の個体にTh1型細胞性免疫を強力に誘導できる生分解性ナノ粒子固定化ペプチドを開発し、体内ウイルス量低下によるBLV伝搬と発症の劇的な抑制、さらに感染防御を可能にすることである。
研究項目及び実施体制(()は研究分担者)
- インシリコスクリーニングを用いた生分解性ナノ粒子固定化ペプチドの創出 (独立行政法人理化学研究所 基幹研究所 間陽子)
- 生分解性ナノ粒子固定化ペプチドのウシ個体への投与試験 (財団法人日本生物科学研究所 布谷鉄夫)
期待される成果、効果
牛白血病ワクチンの開発は、世界規模で肉牛や乳牛の生産性・安全性を向上させ、食料の安定供給へ大きく貢献する。本研究で確立されるMHCの多型性に立脚したワクチン開発の手法は、免疫応答性の個体差が問題となる他の感染症のワクチン開発の突破口を開くと同時に、ペプチドワクチンの畜産分野への導入を加速化し、家畜感染症の克服に大きく寄与する。