研究代表者氏名及び所属
伊藤 康博
(農研機構食品総合研究所)
研究実施期間
平成21年度~23年度
研究の趣旨・概要
本研究は、果実類について、おいしい、日持ちが良い、機能性成分含量が多 い、といった果実品質の飛躍的な向上、あるいは、台風による落果被害を抑える ことによる安定生産化を目標として、これらの要因の遺伝子発現を制御する転写 因子の機能を明らかにする。
果実は未熟な時期には食用に適さないが、成熟の開始によって品質が劇的に 変化し、甘味が増え、香気成分が生成され、色鮮やかになり、軟らかくなり、また 優れた栄養成分を蓄積するなど食品として優れたものになる。したがって成熟の 制御が果実の高品質化の鍵である。本研究では成熟の開始を制御している転写 因子の機能を分子レベルで明らかにし、成熟中の遺伝子発現制御メカニズムを 明らかにする。これにより、果実品質を左右する遺伝子の発現メカニズムが理解 され、品質向上のための遺伝子発現操作を戦略的に行う技術へ発展させること が期待できる。
台風によるリンゴやナシ等の落果被害は多くの場合、果梗部分の離層構造か らの離脱によって生じる。研究担当者はトマトにおいて、この離層構造の形成を制 御する遺伝子を新規に発見した。この遺伝子は前述の成熟制御に関わる転写因 子と同じグループの転写因子である。そこで、本研究ではこの遺伝子機能を解明 することで、植物に普遍的な離層形成制御機構を明らかにする。これにより、将来的に様々な植物で離層形成を抑制できる技術が開発され、台風