研究代表者氏名及び所属
高木 博史 (国立大学法人奈良先端科学技術大学院大学)
研究実施期間
平成21年度~23年度(3年間)
研究の趣旨・概要
酵母の発酵生産環境は細胞内に活性酸素を蓄積する酸化ストレス状態であり、既存の酵母は酸化ストレスに脆弱であることが、発酵能を制限し、酵母の効率的な利用を妨げている最大要因である。我々は新規な酸化ストレス耐性機構を見出し、耐性向上のための機構解明や技術構築をほぼ完了している。しかし、酵母の耐性向上技術を実用に供するためには、高度な酸化ストレス耐性を付与した産業酵母の創製と革新的な発酵生産システムの開発を行なう必要がある。具体的には、酸化ストレス耐性機構(適合溶質の蓄積、抗酸化タンパク質の発現、タンパク質分解系の強化)の高機能化と高度利用を行ない、産業酵母の耐性向上のための育種戦略を構築する。また、有用育種技術のセルフクローニング法により、高度な酸化ストレス耐性を示す産業酵母(パン酵母、酒類酵母、バイオエタノール酵母)を作製し、実用に即した条件で特性評価を行ない、発酵生産システムを構築する。
研究項目及び実施体制(()は研究分担者)
- 酵母の酸化ストレス耐性機構の解明と高機能化
(国立大学法人奈良先端科学技術大学院大学 高木博史) - 酸化ストレス耐性パン酵母の作製と発酵特性の解析
(独立行政法人農研機構食品総合研究所 島 純) - 酸化ストレス耐性酒類酵母の作製と発酵特性の解析
- (アサヒビール株式会社酒類技術研究所 尾形智夫)
- 酸化ストレス耐性バイオエタノール酵母の作製と発酵特性の解析
(独立行政法人酒類総合研究所 下飯 仁)
期待される成果、効果
酸化ストレス耐性酵母の創製により、製パン分野では、長期保存冷凍生地、超高糖生地、高耐久性乾燥酵母などの製造技術を構築できる。酒類・バイオエタノール製造分野では、高濃度のエタノール生産や発酵時間の飛躍的短縮が実現する。また、本研究の耐性向上技術は微生物全般に応用でき、当該産業の競争力強化が期待される。