研究代表者氏名及び所属
小林 哲夫
(国立大学法人名古屋大学大学院生命農学研究科)
研究実施期間
平成23年度~27年度(5年間)
研究の趣旨・概要
糸状菌(カビ)は、古来よりわが国の醸造、発酵に欠くことのできない有用微生物であり、その役割は産業用酵素の生産から有機酸、抗生物質などの低分子生産にまで拡大し、現在の人間生活の質(QOL)の向上に深く関わっている。糸状菌は液体中でも固体上でも生育できるという優れた特徴を持っているが、生育環境の違いによって生活のスタイルや生産する物質や量が変わるため、工業規模で物質生産を行う場合、これらの培養環境に適した生産菌株の育種や生産制御技術の開発に多大な労力と時間が費やされてきた。
本研究では、物質生産の鍵となる生育環境の感知から遺伝子発現に至る分子メカニズムについて明らかにし、その理解をもとに、培養環境シグナルの感知や遺伝子発現の制御システムに分子レベルで人為的改変を加え、液体・固体のいずれの培養条件にも適応した汎用的な物質生産制御技術の開発を目指す。この技術の確立により、新規有用物質生産の迅速・効率化が可能となるだけでなく、現有の大規模工業生産設備を利用した既存の有用物質の生産性向上も期待できる。