研究代表者氏名及び所属
大津 厳生
(国立大学法人奈良先端科学技術大学院大学バイオサイエンス研究科)
研究実施期間
平成24年度~26年度(3年間)
研究の趣旨・概要
システイン・シスチン類は医薬・食品・化粧品など多岐に亘る分野で利用されている。システインは、主に人・動物毛に多く含まれるアミノ酸であり、古くからこれらの酸加水分解物からの抽出により製造されている。しかし、製品の安全性や製造過程での環境への配慮から、消費者のニーズに応えるべく、自然に優しい発酵法によるシステイン生産が望まれている。しかしながら他の多くのアミノ酸とは異なり、システイン自身の毒性や含硫アミノ酸などの問題から、発酵法によるシステインの生産性は低く、また単価も非常に高い。システイン発酵には製造コストを低下させるための多くの課題が残されている。本研究ではシステイン生産能を向上したシステイン生産大腸菌の育種に取り組む。大腸菌の硫黄の代謝制御は非常に複雑でありかつ学術的にも未知の部分が多く、システイン発酵を難しくしている一因に挙げられる。発酵コストの中で硫黄源が占める割合は非常に高いため、硫黄源の利用効率を改善し、グルコースを原料として安価な硫黄源を使用する大腸菌によるシステイン生産技術の開発を行う。さらに、システイン生産大腸菌は、培養後期に発酵槽に蓄積してくるシステインをはじめとする硫黄化合物によりその生育が阻害される。これら生育阻害を緩和することで一層のシステイン発酵生産性の向上を目指す。