生物系特定産業技術研究支援センター

新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業

2000年度 事後評価結果

カンキツによるがん予防に関する基礎的研究

(農林水産省果樹試験場 矢野昌充)     

評価結果概要

全体評価

カンキツ類の健康増進効果に関する多面的研究を行い、ほぼ所期 の目的を達成した。本研究の大きな成果はカンキツ類に含まれるβ-クリプトキサンチン、オ-ラプテン、ノビレチンに優れた抗ガン作用効果のあることを見出したことで、高く評価できる。また、交雑法などによって高β-クリプトキサンチン含有のミカンの作出にも成功し、この成果はカンキツ消費の拡大に役立つと期待される。

中課題別評価

(1)発がん抑制成分高含有系統の作出
(農林水産省果樹試験場 矢野昌充)    

発がん抑制成分を高濃度に含むカンキツ雑種の作出は、カンキツ 産業への波及効果が高い。今後これらの成分の生合成に関わる遺伝子の単離に向けた研究が期待される。

(2)カンキツ由来成分の発がん抑制効力評価と抑制機序の解明
(京都府立医大 西野輔翼)    

β-クリプトキサンチンの発がん抑制効果の作用を世界で初めて明 らかにしており、がん予防研究への貢献は大きい。

(3)カンキツ由来の発がん抑制成分の生物有機化学的研究
(京都大学 大東肇)    

オ-ラプテンとノビレチンについて、初めて発がん抑制物質とし て同定した点とその構造との関連性について有益な知見を得ている。フラボノイド、クマリン、テルペノイド類の発がん抑制効果の研究も学術上重要な意味を有する。

(4)発がん抑制物質の作用機構に関する基礎的解析
(近畿大学 小清水弘一)    

発がん抑制成分の作用機作を解毒酵素群の誘導や酸化ストレスの 抑制などから解明したもので、学術的には一応評価できる。しかし、発がん抑制作用のメカニズムについては、さらに突っ込んだ研究が必要である。