生物系特定産業技術研究支援センター

新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業

2002年度 事後評価結果

酸性土壌における生産性向上を目的とした植物のアルミニウム耐性機構の解明と耐性植物の作出

(岡山大学資源生物科学研究所 松本 英明)

評価結果概要

全体評価

   本研究は、酸性土壌における主要な植物生育阻害因子であるアルミニウム(Al)に関し、その毒性機構の解明と、Al耐性にかかわる遺伝子の単離とその利用による耐性植物の作出を柱としたものである。これまでも、Alの毒性の低減には有機酸による不溶化が有効であることは知られているが、本研究では、コムギのAl耐性系統を用いてリンゴ酸トランスポーター遺伝子(ALMT1)を単離し、それがイネにおいても有効であって、Al耐性を付与することができたことは高く評価できる。こうした有機酸分泌システムは、ミクロの根圏環境では、Alを不溶化することができても、酸性土壌という自然界の土壌で、どの程度有効であるのかは、さらに検討を加える必要があろう。
一方、Alの毒性機構については、未だにその詳細が分子レベルで理解されたとは言えない。そのため、細胞自体をAl耐性にする方策は、残念ながら、生まれていない。今後、本プロジェクトで得られた研究成果を基礎に、さらに、Alの毒性機構の解明に向けての研究を継続し、有機酸による不溶化という方法とともに、使用可能な、遺伝子群を明らかにしていくことが期待される。