((独)農研機構食品総合研究所 今場 司朗)
総合評価結果
当初計画どおり推進
評価結果概要
本研究は、「だるま落とし保護法」を基本技術とした革新的糖鎖自動合成技術の確立とモデル化合物としての分岐6糖PSGL-1合成への応用、及び糖鎖機能を網羅的に解析可能にする規則的な糖鎖ライブラリー合成技術の確立を目指したもので、糖鎖工学分野における独創的かつ先導的な内容を含んでいる。当初掲げた合成計画はほぼ達成しており、その間合成上の幾多の難題にも果敢に挑戦し、諸問題を克服してきており、合成基盤を確立した点では評価に値する。しかしながら、目標に掲げた実用的な糖鎖ライブラリーの作製及び実用レベルでの糖鎖自動合成の開発といった生物産業にすぐに貢献できるような実践的技術には、まだ今後解説すべき問題点が多い。
具体的には、規則的な糖鎖ライブラリー合成技術開発において、ガラクトースユニット間の縮合反応に際し、当初の予定より時間を費やしたものの新しい転移を抑えるだるま落とし保護手順の方法を確立した。しかし、作製したガラクトオリゴ糖ライブラリーを糖鎖アレイに用いたベロ毒素に対する活性評価試験には至らなかった。糖鎖自動合成への取り組みでは、最終モデル化合物としてきた分岐6糖PSL-1の全自動合成を達成してきてはいるが、その収率が極めて低いなど、まだ解決すべき問題点が残されている。