生物系特定産業技術研究支援センター

新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業

2007年度 事後評価結果

高温・乾燥等の環境ストレスによる不稔誘発機構の解明とその制御

(農研機構作物研究所 川岸 万紀子)

総合評価結果

やや不十分

評価結果概要

本研究の当初計画は「イネ生殖過程の分子制御機構と稔性低下の分子基盤の解明」を目的に、(1)離遺伝子群の機能解明、(2)環境ストレス応答生殖関連遺伝群のマイクロアレイによる探索、(3)上記の遺伝子導入によるストレス耐性イネの育成、の内容で構成し、その展開を図った。中間評価において3年間でストレス応答遺伝子を網羅的に解析し、その組換え体を育成するのは無理であろうとの指摘により、ストレス要因を「高温・乾燥等」に限定し、(3)の組換え体育成は断念し、かつ、最終的にストレス要因は「高温」だけに限定した。生殖器官に対する高温の影響を遺伝子レベルで解析することにより、これまで生理学的・作物学的観点から解析されてきた現象のメカニズムに迫る興味深い知見が得られるものと期待されたが、高温不稔への関与が示唆される遺伝子をいくつか同定できたものの、高温不稔という現象の核心に迫る確定的な結果を得るには至らなかった。マイクロアレイ解析から網羅的に全貌を概観することと、個別の遺伝子を単離することのどちらに主眼を置くのかという点もやや不明確だった。また、解析する遺伝子の選抜に関しても一貫性に欠ける点も見受けられた。この研究は初期の目標を完全に達成したわけではない。また、包括的に、生殖と高温の問題を解決できたわけでもない。ただ、ここに作られた基盤を今後の研究に活かすことができれば、ゲノム・変異体などが充実しているイネで、興味深い研究が展開されるのではと考える。