生物系特定産業技術研究支援センター

新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業

2008年度 事後評価結果

シロアリの卵運搬本能を利用した駆除技術の開発

(岡山大学大学院環境学研究科 松浦 健二)

総合評価結果

優れている

評価結果概要

本研究は、研究代表者自身によるシロアリの生態や菌核菌(TMB)との共生現象の発見からスタ-トしており、当初の目標に沿って大幅な変更もなく5ヶ年間の研究を精力的に推進している。シロアリの卵運搬特性に関するメカニズムの解析については単に生態学的研究にとどまらず、遺伝子解析や生化学的手法を巧みに取り込んでシステマティックに行い、幅広い展開が実施された。
目標達成のために、(1)シロアリの卵認識物質の化学分析及びバイオアッセイ (2)卵擬態菌核菌の単離培養及びrRNA遺伝子分析 (3)擬似卵駆除剤のフィールド評価 という三つの研究項目に取り組み、卵認識フェロモンを同定し、フェロモン成分がシロアリの唾液と卵に共通して含まれる抗菌タンパク質のリゾチームとβ―グルコシダーゼであることを突き止めるなどシロアリの生理、生態に関する世界的な発見に成功し、卵運搬本能を利用した擬似卵駆除剤の開発に向けた基盤を作り上げ、このような技術が世界のシロアリのほとんどに利用可能な技術である可能性が高いことを示した。さらには、ヤマトシロアリについてはフィールドでの保有卵数の季節推移、卵保護行動の季節活性を解明するなど目標を上回る優れた成果が得られている。これらの功績は高く評価されよう。また、卵駆除剤の開発に向けた基礎的な取組みを既に開始しており、産業への寄与につながる可能性のある成果が得られつつあると判断される。