生物系特定産業技術研究支援センター

新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業

2008年度 事後評価結果

環境中での細菌の環境汚染物質分解能を支配するプラスミド機能の解明

(東京大学生物生産工学研究センター 野尻 秀昭)

総合評価結果

当初計画どおり推進

評価結果概要

本研究では、難分解性汚染物質(ダイオキシン・カルバゾール)を分解するプラスミドを材料に、これを保持する分解菌をモデル土壌・モデル環境水に移植(バイオオーグメンテーション)した後の機能の変化・消長をモニタリングすることにより、プラスミドがその機能を発揮し得る条件を明らかにする。
研究成果については、いくつもの学術的価値の高い基礎的知見が得られており、また、その情報発信も十分になされていることから、一定の成果が挙げられたと評価できる。成果のいくつか(接合伝達性に及ぼす化学的環境の影響、宿主内でのプラスミド-染色体相互転写調節ネットワークの形成)は、接合伝達性分解プラスミドを有する微生物を活用して原位置バイオレメディエーションを行う上での基盤的知見になる。
もうひとつの視点は生物系特定産業への寄与である。バイオレメディエーションは「生物機能利用による環境改善」の重要な技術であり、有害物質で汚染した土壌を浄化し、安全な農地を確保するために大きく貢献する技術である。提案書では本プロジェクトの研究成果がバイオオーグメンテーションの効率化、安定化に寄与すると謳っているが、現行の状況では、接合伝達性分解プラスミドを有する微生物を活用したバイオオーグメンテーションの認可は難しい。したがって、現行のバイオオーグメンテーションに対する寄与について多くは望めないことになる。しかし、多くの微生物で接合伝達性分解プラスミドが環境汚染物質分解機能に関与していることを考えると、本プロジェクトの成果はバイオスティミュレーションの効率化に貢献すると期待される。