((独)農業生物資源研究所 川越 靖)
総合評価結果
当初計画どおり推進
評価結果概要
(1)全体評価
本課題は、イネ胚乳細胞の貯蔵オルガネラであるアミロプラストとタンパク質顆粒の生成・発達の分子機構を解明し、その知見を応用して「オルガネラ工学」の手法を開発することを目的とした研究である。
アミロプラストについては、その分裂様式を明らかにした。また、イネに特徴的な複粒型デンプンの形成はアミロプラストの分裂と密接に関連することを明らかにした。
さらに、デンプン合成・分解とアミロプラストの分裂・発達は相互依存的であることを明らかにした。
胚乳タンパク顆粒の生成・発達の分子機構の解明については、イネの種子貯蔵タンパク質のジスルフィド結合形成に関与するEro1とPDIL1;1の機能を明らかにし、これがグルテリンの特性に大きな影響を与えていることを明らかにした。この成果は、米粉の品質向上に向けた大きな知見である。
タンパク質顆粒の発達が阻害されたesp2変異体の米粉特性の解析にについては、やや不十分であったが、製パン特性について、興味深い結果を得た。
これらの成果を総合的に勘案すると課題全体としては「計画通り達成された」と評価できる。
また、これらの研究成果は、複数の原著論文と4件の特許出願として情報発信されているが、公表された原著論文以外にも学術的な成果が得られており、今後も継続して論文化して公表することが望まれる。