生物系特定産業技術研究支援センター

新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業

2011年度 事後評価結果

ウィルス増殖阻害薬剤開発に向けた基礎研究

研究代表者氏名及び所属

石川 雅之(独立行政法人農業生物資源研究所)

総合評価結果

優れている

評価結果概要

本研究は抗植物ウイルス剤開発を目指した、分子生物学的及び構造生物学的研究と位置づけられ、抗ウイルス剤の開発に向けて不可欠な宿主植物とウイルスとの相互作用ネットワークの解明、トマトモザイクウイルスに対する抵抗性遺伝子Tm-1のウイルス複製阻害機構の解明、ウイルス複製タンパク質ヘリカーゼドメインの立体構造の解明など学術的には非常に意義のある成果が得られている。とくにウイルス複製酵素のヘリカーゼドメインとTm-1複合体の結晶構造解析を成し遂げ、これらタンパク質の分子レベルでの相互作用情報を複合体構造において提供したことは高く評価され、ただちに抗ウイルス剤の開発に結び付かないにしても、ウイルス複製酵素のヘリカーゼドメインをターゲットとする抗ウイルス剤開発のための基盤情報として、また、動物も含めたウイルス研究の発展に大きく寄与する情報であろう。一方、宿主由来の複製タンパク質と相互作用する因子が膜タンパク質であることが研究の進捗を順調なものとしていない。また、ARL8に関しては単なる立体構造決定にとどまらず、動的立体構造の解析がなされたが、実際にコンフォメーション平衡をシフトさせること及び複製タンパク質との相互作用の阻害までの研究の進捗が行われていれば更に高い評価が得られると考える。