生物系特定産業技術研究支援センター

新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業

2011年度 事後評価結果

マメ科植物の共生微生物受容システムと感染・根粒形成を支える遺伝子ネットワークの解析

研究代表者氏名及び所属

今泉(安楽) 温子(独立行政法人農業生物資源研究所)

総合評価結果

優れている

評価結果概要

本研究では、「感染受容化」を制御する共通シグナル伝達経路の分子機構を解析し、根粒共生系及び菌根共生系の感染成立過程を制御する遺伝子ネットワークを解明するとともに、「根粒器官形成」および根粒菌の「感染糸形成」の制御機構を解析し、根粒共生系を支える分子機構の解明を目指した。その結果、根粒・菌根共生を制御する共通シグナル伝達経路遺伝子群が、根粒共生をするマメ科植物のみならず、菌根共生をするより広範囲な植物においても機能的に保存されていることを明らかにした。また、根粒共生系では共通シグナル伝達とマメ科植物に特有の根粒共生特異的経路との合流が根粒菌感染成立に必須であることを立証し、二経路合流モデルを提唱した。さらに、根粒共生特異的因子として、カルモジュリンの関与を明らかにするとともに根粒構造形成には、二経路合流が必ずしも必須ではないこと等を明らかにした。以上のように質の高い成果を上げており高く評価できる。

これらの成果は共生により得られるメリットの有効活用や、共生相手となる植物種範囲の拡大が現実のものとなる可能性が高くなったことを示し、生物系特定産業への活用に向けて、その道筋を明確にできたと評価できる。今後、非マメ科植物への空中窒素固定能の付与という人類の大きな夢の達成に向けた研究が展開され、生物系特定産業に大きく貢献することが期待される。