(慶應義塾大学理工学部 佐藤智典)
評価結果概要
全体評価
糖鎖プライマ―を細胞の培地に添加するだけで細胞内において任意の糖鎖が合成され、さらに放出されるという研究成果は評価できる。現在までの研究成果では、任意の糖鎖を作るという段階には至らず、糖脂質糖鎖について4糖から5糖の糖鎖が作れるという段階ではあるが、細胞の種類などを選択することによって任意の糖鎖を作ることができる可能性は大きい。本研究によって糖鎖の合成法が確立し、糖鎖ライブラリ―ができれば、糖鎖医薬として利用することが可能であり、その波及効果は大きい。
中課題別評価
(1)糖鎖ライブラリーの作成と糖鎖高分子の開発
(慶應義塾大学理工学部 佐藤智典)
糖鎖プライマ―を用い、動物細胞によって多種類の糖脂質型糖鎖が合成されたという研究結果が得られている。得られたこれらの糖鎖はガングリオ系の糖鎖であり、ウイルスや細菌毒素のレセプタ―として働くことが考えられるので、感染阻害剤としての応用が期待される。
(2)糖鎖プライマーの作成
(東京工業大学生命理工学部 橋本弘信)
糖鎖プライマ―の合成については、C12のアルキルβ-ラクトシドが最も効果的なプライマ―であることが確認され、その合成法も確認された。アジド基を導入したプライマ―が細胞内において安定に働くという知見が得られた事は大きな研究成果である。
(3)糖鎖プライマーの細胞生物学的影響の評価
((財)日本皮革研究所 山形達也)
アジドアルキルラクトシドを糖鎖プライマ―として培地に添加し、B16細胞を培養するとガングリオシドGM3糖鎖が合成されるという結果が得られている。また、アルキルラクトシドよりもアジドアルキルラクトシドの方が細胞内で安定であり糖鎖プライマ―として適していることを見出した研究成果は、大きな知見である。