(東北大学大学院農学研究科 佐藤英明)
評価結果概要
全体評価
本研究のゴールは「家畜1個体の卵巣から多数の成熟卵子を調製し、移植可能胚の作成ならびに核移植のレシピエントとしての実証実験をおこなうこと」にある。計画達成のための基礎的知見は充分得られつつあると判断され、国際的にも優れたものである。現時点では、計画どうりに進めて良いと思われ、諸知見を個体・組織・器官レベルでの機能制御に活かせるかを実証することが計画達成のキーポイントとなる。
中課題別評価
(1)家畜における卵子の死滅予防法と新しい排卵誘発法の開発
(東北大学大学院農学研究科 佐藤英明)
排卵数の増強を図る目的で、ユニークな研究を進めているが、そのなかで、血管新生、アポトーシス関連、rdw ラットを用いた研究等は、基礎的研究として価値が高い。さらに、現場への応用を考えた試験への取り組みを期待する。このため、残余の2年間の研究目的を絞ることも必要である。クローンブタ作出の課題が追加されたが、現在法と比較して、培養細胞株をドナーに用いる点と、遺伝子導入及びノックアウト技術につながる点で優れている。
(2)家畜における超未成熟卵子の体外発育法と凍結保存法の開発
(株式会社機能性ペプチド研究所 星宏良)
超未成熟卵の凍結の条件の検討に始まり、培養系での未受精卵の発育にかかわる因子が明らかにされた。短い研究期間にもかかわらず、ウシ超未成熟卵子(前胞状卵胞)の凍結保存方法についての特許を取得していることは高く評価できる。また、目的を達成するためにも量的なスケールアップが望まれているが、そのためには、初期前胞状卵胞についても体外培養法が顕著な効果が見られることが望まれる。