生物系特定産業技術研究支援センター

新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業

2001年度 中間評価結果

ミツバチの脳機能に働く遺伝子を利用した新品種開発等に関する基礎的研究

(東京大学大学院理学系研究科 久保健雄)

評価結果概要

本研究は、産業的価値と優れた脳機能を有するミツバチの、より一層の有効利用を図るため、ミツバチの記憶、行動、カースト分化などを規定する遺伝子の検索と機能解析を行い、その知見を、優れたミツバチの新品種の開発やヒトの医学分野への応用の可能性などを明らかにすることを目指している
これまでの研究結果をみると、新しい遺伝子の検索・機能解析の研究では、概ね順調に進展しており、特にミツバチ脳で特異的 に発現し、神経可塑性を亢進させる転写因子と考えられる遺伝子の特性解明と哺乳動物等でのホモログの発見、女王蜂の繁殖性(カ ーストの分化)に関わっていると推測される遺伝子の同定、門番 蜂の攻撃性に関与していると考えられる遺伝子の同定とそれがピコナウイルスのゲノムRNAであることを明らかにするなど、この分野では興味のあるインパクトの高い成果を挙げており評価される。
しかしながら、得られた遺伝子の機能については仮説の段階のものが多く、また、新品種の開発や遺伝子機能の検討に当たって 必要となる、ミツバチへの遺伝子導入技術の開発研究についは、まだ遺伝子導入に成功しておらず、研究に遅れが見られる。
このようなことから、今後の研究においては、機能が明らかにされていない新規遺伝子の機能解析を急ぐとともに、研究が遅れている遺伝子導入技術の開発に重点をおいて取り組むことが重要である。