生物系特定産業技術研究支援センター

新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業

2009年度 中間評価結果

ウイルス増殖阻害薬剤開発に向けた基礎研究

((独)農業生物資源研究所 石川 雅之)

評価結果概要

本研究は、植物ウイルス増殖を阻害する化合物探索を目指しての、トマトモザイクウイルス(ToMV)RNAの複製に関する基礎研究である。創薬開発においては新規標的タンパク質を見つけること、及び新規作用点を解析することが肝要であるので、本研究課題のテーマ設定は妥当と考える。これまでのところ、ウイルス複製酵素と宿主因子の相互作用に関わるドメインの同定、及び三次元構造解析に必要な可溶性タンパク質、ペプチドの取得に関わる研究が着実に進められ、当初の中間目標に達する成果が得られている。特に、Tm-1とtm-1タンパク質による細胞レベルでのトバモウイルスRNA合成阻害機構を明らかにし、自然界における非宿主抵抗性機構の一つを分子レベルで明らかにしたことは高く評価できる。構造生物学的研究においては、複製に関わる宿主因子ARL8の動的構造について新たな知見が得られ、その他の因子についても精製と結晶化条件の検討が進んでいる。これらの研究と成果は抗ウイルス剤開発のための重要基盤の一つになると思われる。以上から、本プロジェクトは当初目標を一部上回っており、貴重な成果が蓄積されていると判断されるが、論文としての成果の公表が望まれる。