研究項目及び実施体制(◎は総括研究代表者)
- ミュータントパネルの作出と遺伝子機能の系統的解析技術の開発
(◎廣近洋彦/独立行政法人農業生物資源研究所) - 破壊遺伝子の効率的解析技術の開発
(小野里桂/農林水産先端技術研究所)
研究の目的
イネゲノムの構造解析が急速な勢いで進められている。しかし、配列情報だけから遺伝子の機能を知るには限界があり、多くの遺伝子は機能未解明のため有効利用されていない。遺伝子の機能解析法には種々の方法があるが、トランスポゾンを利用した遺伝子破壊法は、一度に多数の遺伝子破壊系統を作出することができ、各破壊系統の示す表現型を解析することにより系統的に遺伝子機能を調べることができるため、ゲノム時代の二一ズに合った重要な方法となっている。本研究では、トランスポゾンによる遺伝子破壊を利用して大量の遺伝子破壊イネ系統を作出し、遺伝子の機能を系統的に解析するためのシステムを開発するとともに、これらのシステムを利用して遺伝子の機能解析を進める。
研究の内容
研究代表者らによって発見されたイネのレトロトランスポゾンによる効率的遺伝子破壊を利用し、大量の遺伝子破壊系統の作出を目指すとともに、それらを利用して効率的に機能解析を進めるためのシステムを開発する。具体的には、作出された変異体の表現型のデータベースの構築、目的とする遺伝子の変異体スクリーニングシステムの開発、破壊遺伝子の網羅的解析とデータベース化を目指す。また、これらのシステム及びデータベースを利用して、遺伝子の機能解析を進める。
主要な成果
- イネの遺伝子機能解析研究を推進するための重要な材料であるミュータントパネル(培養によるレトロトランスポゾンTos17の活性化によってイネ遺伝子を破壊した変異系統群50,000系統)を作出した。
- レトロトランスポゾンの挿入により破壊された12,000件の遺伝子の配列を明らかにした。類似性検索により、代謝、転写調節、翻訳調節、シグナルの受容、伝達に関与すると推定される遺伝子や、病害抵抗性、形態形成関連遺伝子等、種々のクラスの遺伝子が破壊された変異系統を同定した。
- PCRによる変異体スクリーニングシステムを開発した。4万種類の変異系統の中から目的とする遺伝子の変異体をスクリーニングすることが可能となった。
- 上記のシステム及びデータベースを利用して機能解析をすすめ、30種類の遺伝子の機能を明らかにした。そのうち塩ストレス耐性や、草型、草丈を制御する遺伝子等5種類について、特許出願を行った。
主な発表論文
- Sato Y., et al. : Loss-of-function mutations in the rice homeobox gene OSH15 affect the architecture of internodes resulting in dwarf plants : EMBOJ., 15: 992-1002 (1999)
- Agrawal G. K., et al. : Screening of the rice viviparous mutants generated by endogenous retrotransposon Tos17insertion: Tagging of a zeaxanthin epoxidase gene and a novel OsTATC gene : Plant Physiol., 125: 1248-1257 (2001 )
- Takano M., et al. : Isolation and characterization of rice phytochrome A mutants : Plant Cell, 13: 521 - 534 (2001)
- Yamazaki M., et al. : The rice retrotransposon Tos17 prefers low-copy number sequences as integration targets : Mol. Genet. Genomics, 265: 336-344 (2001)
- Hirochika H. : Contribution of the Tos17 retrotransposon to rice functional genomics : Curr. Opin. Plant Biol. , 4 : 118- 122 (2001 )
研究のイメージ
