研究項目及び実施体制(◎は総括研究代表者)
- ジベレリン結合タンパク質に関する研究
(中嶋正敏/東京大学大学院農学生命科学研究科) - ジベレリンのシグナル伝達機構の解明に関する研究
(鈴木義人/東京大学大学院農学生命科学研究科) - 抗体を用いたジベレリンの輸送制御に関する研究
(◎山□五十麿/東京大学大学院農学生命科学研究科)
研究の目的
発芽や伸長成長、性の表現など植物のさまざまな生理現象に深く関わっている植物ホルモンであるジベレリン(GA)の受容とシグナル伝達の初期過程における分子機構を明らかにするとともに、抗体を用いて通導組織を介したGAの輸送や移行を制御する手法を開発し、植物の成長調節の新たな技術の開発に貢献する。
研究の内容
ジベレリン受容体の解明を目指して、アズキ胚軸のGA結合タンパク質を特定するための精製を進めるとともに、酵母を用いたthree-hybrid系やGα共役受容体検索系を構築し、受容体遺伝子の検索を試みた。また、GA応答性アラビノガラクタン蛋白質(AGP)遺伝子をクローニングし、アズキ、キュウリ等の胚軸伸長に対するGAの作用におけるAGPの関与、大麦種子におけるα-アミラーゼ誘導におけるGAシグナル伝達系上のAGPの関与について追究した。さらに、抗GA一本鎖抗体の構築と植物への導入を利用した、成長制御技術の開発を目指した。
主要な成果
- アズキのGA結合タンパク質として2つの活性成分(A・B活性)が存在すること、両活性成分とも活性型GAに高い親和性(Kd=6×10-10M)を示すこと、分子質量(25~30kDa)や等電点(pI=8~9)も非常に類似していること、存在量は約0.1pmol/kgFWであることを明らかにした。B活性を約50万倍まで濃縮し、候補タンパク質についての検討を行っている。
- 植物のGαサブユニットを酵母に組み込み、Gαの関与が示唆されているGA受容体をコードする遺伝子のスクリーニング系を開発した。
- キュウリ胚軸からのGA応答性AGP遺伝子の同定を起点に、アズキ、キュウリにおける胚軸仲長にAGPが必要であることを明らかにした。また、シロイヌナズナのAGPの一つであるAtAGP4の破壊株を調製した。
- さらに、大麦アリューロン細胞でのα-アミラーゼ誘導におけるGA情報伝達に細胞膜AGPの関与を明らかにした。
- 輸送型と考えられる活性型GAの前駆体、GA19/24に対する抗体を一本鎖抗体としてタバコでは植物体全体で、イネでは伴細胞特異的に発現させ、GAの生合成や輸送を撹乱することにより、背丈の低くなる変異体を作出した。
主な発表論文
- Chono M., et al. : Characterization of a protein kinase gene responsive to auxin and gibberellin in cucumber hypocotyls: Plant Cell Physiol., 39: 958-967 (1998)
- Suzuki Y., et al. : Preparation and application of anti-idiotypic antibody against anti-gibberellin A4 antibody :Biosci. Biotechnol. Biochem., 63: 648-654 (1999)
- Shimada N., et al. : Expression of a functional single-chain antibody against GA24/19 in transgenic tobacco:Biosci. Biotechnol. Biochem., 63: 779-783 (1999)
- Suzuki Y., et al. : A novel transposon tagging element for obtaining gain-of-function mutants based on a self-stabilizing Ac derivative: Plant Mol. Biol., 45: 123-131 (2001)
- Chono M., et al. : Expression pattern of the CsPK3 auxin-responsive protein kinase gene: Biosci. Biotechnol. Biochem., 63: 605-612 (2001)