研究項目及び実施体制(◎印は総括研究代表者)
- 酸化ストレス制御因子含有食用植物素材の探索と評価システムの構築
(◎大澤俊彦/名古屋大学大学院生命農学研究科) - 植物性食品中の機能性色素の生体内動態の解明
(長尾昭彦/独立行政法人食品総合研究所) - 植物性食品中の機能性色素の酸化ストレス制御機構の解明
(寺尾純二/徳島大学医学部) - 新しい酸化ストレス応答遺伝子の探索と細胞・個体レベルにおける抗酸化剤評価系の確立に関する研究
(豊國伸哉/京都大学大学院医学研究科) - 酸化ストレス制御成分高含有食用植物の創出
(田代亨/三重大学生物資源学部) - 香辛植物に含まれる酸化抑制因子の解明
(中谷延二/大阪市立大学生活科学部)
研究の目的
日常摂取している食用植物中に存在する、酸化ストレスに関連した疾病を予防する食品因子の探索を酸化ストレス傷害の制御を指標に行うと共に、酸化ストレス制御成分高含有食用植物の創出を行い、試験管レベルから個体レベル、そしてヒトを対象とした、生活習慣病予防介入試験のための基礎となりうる総合的解析システムの構築を目的とする。
研究の内容
酸化ストレスの制御を基盤として熱帯産の香辛植物を対象に酸化抑制因子の検索を行うと共に、活性物質の有機化学的解析、免疫化学的手法を利用した抗酸化活性評価法の開発や疾病予防酵素群誘導システムの開発を行い、トランスジェニック植物を含めた酸化ストレス制御成分高含有食用植物の創出を行った。また、カロテノイドやフラボノイド、アントシアニンなど抗酸化食品因子の生体内での機能性発現機構について代謝・吸収機構を中心に酸化ストレス応答遺伝子発現のメカニズムについても検討を行い、最終的にヒトヘの介入試験を行うための基盤的解析を行った。
主要な成果
- 紫トウモロコシの35S::C1遺伝子を導入した白米種子(ノトヒカリ)の胚乳部にアントシアニンが蓄積したトランスジェニック米種子を開発し、ニンニク優良系統中に存在する強力な解毒酵素誘導因子の探索に成功した。
- 新規な酸化ストレス制御評価法の開発を目的に、細胞への人工遺伝子導入を含めた新しい第二相酵素誘導システムを確立し、酸化ストレス応答遺伝子発現のメカニズム解析に成功した。また、カロテノイド、フラボノイドを用いた生体内機能発現の機構解析において消化管での吸収・代謝の有機化学的解析を中心に酸化ストレス傷害の低減やアポトーシス誘導などに新しい知見を得ることができた。
- 疾病モデル動物(糖尿病性白内障モデルラットや腎がん発症モデルマウス)に対してのアントシアニン、高アントシアニン含有米の投与により、最終的なヒトヘの介入試験の基盤の確立に成功した。
主な発表論文
- T. tsuda, et al. : Absorption and Metabolism of Cyanidin 3-0- β-D-glucoside in Rats: FEBS Lett., 449: 179-182 (1999)
- Y. nakamura, et al. : Redox Regulation of Glutathione S-transferase P1 Induction by Benzy1 Isothiocyanate: Possible Correlation of Enzyme Induction with the Formation of Reactive Oxygen Intermediates: Cancer Res., 60: 219-225 (2000)
- K. murota, et al. : Efficiency of absorption and metabolic conversion of quercetin and its glucosides in human intestinal cell line Caco-2. : Arch. Biochem. Biophys., 384 (2) : 391-397 (2000)
- A. nagao, et al. : Inhibition of β -carotene-15, 15'-dioxygenase activity by dietary flavonoids :J. Nutr. Biochem., 11 (6) : 348-355 (2000)
- T. tanaka, et al. : Expression of stress-response and cell proliferation genes in renal cell carcinoma induced by oxidative stress : Am J Pathol, 156: 2149-2157 (2000)
- H. kikuzaki, et al. : Phenylbutanoid Dimers from the Leaves of Alpinia flabellata: Phytochemistry,56: 109- 114 (2001)
研究のイメージ
