生物系特定産業技術研究支援センター

新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業

2001年度 研究成果

植物性染色体の全構造決定に基づく性制御技術の開発

研究項目及び実施体制(◎は総括研究代表者)

  • 植物性染色体の全構造解析に基づく性制御技術の開発
    (◎大山莞爾/京都大学大学院生命科学研究科)
  • 性染色体単離による性染色体特異的遺伝子群の単離
    (中山繁樹/独立行政法人農業生物資源研究所)

研究の目的

雌雄異株植物の中には性染色体を有するものがあり、哺乳動物の場合と同様、性染色体に性決定・性分化関連遺伝子がコードされていると考えられる。植物性染色体に関する研究は、これまで主に大型の性染色体をもつヒロハノマンテマを用いて行われてきたが、性決定因子の同定には至っていない。そこで、雌雄異株植物であるゼニゴケの小型の性染色体を網羅的に解析し、植物における性の決定・分化に必要な遺伝子群とその制御機構の解明を行う。

研究の内容

ゼニゴケは雌雄異株植物であるとともに、生活環のほとんどを半数体として過ごすので、性染色体について雄株はY染色体のみ、雌株はX染色体のみを有する。本研究課題では、ゼニゴケのこのY染色休・X染色体の排他性を利川して、雄および雌に特異的な遺伝情報を個別に解析する。まず、染色体上の遺伝子の位置を知るための超高効率FISH法の開発を行いながら、ゼニゴケ性染色体DNAを単離する。次いで性染体の全塩基配列を明らかにし、性の決定・分化に必要な遺伝子群を単離・解析する。

主要な成果

  • ゼニゴケ雌株・雄株それぞれについてゲノミックライブラリーを作成し、Y染色体に由来するクローンpMM4G7を得た(Plant J., 2000)。このクローンの解析から、ゼニゴケY染色体には特異的反復配列が蓄積している領域があり、その領域のみに存在して雄生殖器官特異的に発現している遺伝子ORF162を見いだした(Proc. Natl. Acad. Sci. USA,2001)。
  • 染色体DNAマー力一を単離した(Genetics, 2001)。それらを用いた染色体ウォーキングにより、Y染色体については合計で約5Mbのコンティグ地図を作製した。
  • パーティクルガンによるゼニゴケの形質転換系を開発した(Transgenic Res., 2000)。この系を利用して約2000のタグラインを作成し、その中から生殖器を恒常的に誘導する変異株を単離した。
  • ゼニゴケのX染色体に存在する45SリボソームDNAクラスターにX染色体特異的な反復配列が存在することを明らかにした。X,Y染色体それぞれに特異的に存在する反復配列の解析から、塩基配列の付加と反復が、ゼニゴケ性染色体の分化に重要な役割を果たしていると考えられることを明らかにした(Chromosome Res., 2001)。

主な発表論文

  • Okada S., et al. : Construction of male and female PAC genomic libraries suitable for identification of Y-chromosome-specific clones from the liverwort, Marchantia polymorpha : Plant J., 24: 421 -428 (2000)
  • Okada S., et al. : The Y chromosome in the liverwort Marchantia polymorpha has accumulated unique repeat sequences harboring a male-specific gene: Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 98: 9454-9459 (2001)
  • Fujisawa M., et al. : Isolation of X- and Y-chromosome-specific DNA markers from a liverwort, Marchantia polymorpha, by represen tational difference analysis : Genetics., 159: 981 -985 (2001 )
  • Takenaka M., et al. : Direct transformation and plant regeneration of the haploid liverwort Marchantia polymorphaL. : Transgenic Res., 9: 179-185 (2000)
  • Nakayama S., et al. : Additional locus of rDNA sequence specific to the X chromosome of the liverwort,Marchantia polymorpha : Chromosome Res., 9: 469-473 (2001)

研究のイメージ

植物性染色体の全構造決定に基づく性制御技術の開発