研究項目及び実施体制(◎は総括研究代表者)
- 胎盤オルガノイド構築技術の開発
(◎橋爪一善/独立行政法人農業生物資源研究所) - 受胎・妊娠維持機構の解明
(岡野 彰/独立行政法人農業技術研究機構畜産草地研究所) - 子宮・胎盤機能の分子機構の解明
(伊東 晃/東京薬科大学薬学部) - 胎盤再構築技術開発のための基礎的研究
(大濱紘三/広島大学医学部)
研究の目的
牛の流産や早産の多くは、胎盤の発育・機能不全に起因し、受精卵移植などによる優良形質牛の大量生産を企図しても、産子生産率が30%に満たないのが実状である。このため、その原因の究明と対応技術の開発による優良牛の安定増産技術の確立が緊急の課題となっている。本研究では、着床・受胎に必要な子宮内膜情報を明らかにするとともに、牛の子宮および胎盤様構造体を培養細胞から組織工学的手法により再構築する手法を開発し、機能を持つ構築体の生体への適用を通して受胎率改善技術の開発に資する。
研究の内容
本研究では、ウシの子宮内膜機能を解析するとともに、ウシ子宮、胎盤および受精胚子由来の細胞系を組織工学的に再構築し、生体外で着床、妊娠機構を解明するモデルの開発を試みた。また、子宮・胎盤様細胞構造体(スフェロイド)を生体へ移植することによりウシの子宮および卵巣機能の制御を試みた。
主要な成果
- 子宮内膜細胞外マトリックス改変はMMPが主体であり、その活性発現に新しい物質EMMPRINが関与することを明らかにした。
- 継代可能な子宮、胎盤および栄養膜細胞系を確立した。
- アスコルビン酸を用い子宮内膜様構造体の作製方法を確立した。
- 受精胚と共培養可能な細胞を含む培養担体を作製し、着床様現象を再現した。
- 栄養膜細胞の機能を解析するインターフェロン・タウの放射免疫測定法を確立した。
- 子宮胎盤由来細胞と栄養膜細胞系からなる細胞構築体によるウシの発情周期調節が可能となった。
主な発表論文
- Sato T., et al. : Furin-independent pathway of membrane type 1-matrix metalloproteinase activation in rabbit dermal fibroblasts : J. Biol. Chem., 274 : 37280-37284(1999)
- Shimada A., et al. : Isolation and characterization of bovine blastcyst-derived trophoblastic cell line, BT-1 : development of feeder cell-free culture system : Placenta, 22 : 652-662(2001)
- Yamada O., et al. : Expression of prolactin-related protein I at the fetomaternal interface during the implantation period in cows : Reproduction, 124 : 427-437(2002)
- Yamauchi N., et al. : A three-dimensional cell culture model for bovine endometrium : regeneration of a multicellular spheroid using ascorbate : Placenta : in press.
- Kizaki K., et al. : Cloning and Localization of Heparanase in Bovine Placenta : Placenta : in press.
- Hirata M., et al. : Differential regulation of the expression of matrix metalloproteinases and tissue inhibitors of metalloproteinases by cytokines and growth factors in bovine endometrial stromal cells and trophoblast cell line BT-1 in vitro : Biol Reprod. : in press.
研究のイメージ
