生物系特定産業技術研究支援センター

新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業

2003年度 研究成果

食品成分による脂質代謝の調節に関する研究

研究項目及び実施体制(◎は研究代表者)

  • 食品成分による脂質代謝機能に関する研究
    (◎森山達哉/京都大学大学院農学研究科)
  • 食用植物性タンパク質の単離・精製及び有効品種の検索
    (丸山伸之/京都大学大学院農学研究科)

研究の目的

ダイズタンパク質などの食用植物性素材に焦点を当て、脂質代謝を適正に調節する成分や画分を見出し、その作用機構の解明や、機能性食品素材としての実用化を目指した基礎的な検討を行う。また、有効な画分の含有率や、特徴的な分子種を探索するための基盤情報源としてダイズ品種のデータベースを構築する。

研究の内容

  • ダイズタンパク質を大量に分画・精製し、飼料として肥満モデルマウスなどに与えた。飼育後、血清の各種パラメーター、肝臓での脂質代謝関連酵素活性やそれらの遺伝子発現レベル、等を詳細に解析した。
  • ヒト肝臓培養細胞を用いたin vitroの系によって、脂質代謝に有効なダイズタンパク質由来ペプチドや機能性ペプチド、低分子食品成分を探索した。
  • 脂質代謝の調節を解析するための新規な方法論や解析ツール、測定系、ターゲット分子などを開発した。
  • 有効品種を検索するための基盤データとして、(独)農業生物資源研究所より移管したダイズ品種(約5800種)の種子プロテオームを解析しデータベース化し、特徴的な構成成分の構造を解析した。

主要な成果

  • ダイズタンパク質のうち、血清脂質や血糖値、高インスリン値などを低下させる機能を有した画分(β-コングリシニン:7Sグロブリン)を見出し、その作用機構や生体への効果・影響について解明した。
  • ダイズβ-コングリシニンを分解して得たペプチド混合物は、脂質代謝適正化能を維持し、かつ乳化性や溶解性、安全性の点で優れており、新規機能性食品素材として実用化可能であることがわかった。
  • 加工食品やダイズ種子中に含まれるダイズβ-コングリシニンの特異的な定量法を確立した。
  • ダイズ品種約5800種類のタンパク質組成、成分組成、加工特性などの情報を掲載したダイズ種子プロテオームデータベースを構築した。特徴的な構成成分(β変異体、A3変異体)の構造を明らかにした。
  • 培養肝細胞からのリポタンパク質分泌を抑制するβ-コングリシニン由来ペプチドや食品由来低分子化合物を見出し、脂質代謝調節能を有する食品素材として利用できる可能性を示した。
  • 脂質代謝と密接に関わるインスリン抵抗性の責任分子として報告されたレジスチンの定量法を開発し、レジスチンの変動を解析した。その結果、当初の説を否定する結果を得、新規な生理機能性を示唆した。

見込まれる波及効果

本研究で見出したダイズ由来機能性タンパク質・ペプチド素材は、健康増進のための高付加価値食品素材として食品産業による産業化が期待される。また、新規な脂質代謝解析ツールや定量法は、バイオ研究支援産業において産業化可能である。

主な発表論文

  • Moriyama T., et al. : 3-Hydroxy-3-methylglutaryl coenzyme A reductase is sterol-dependently cleaved by cathepsin L-type cysteine protease in the isolated endoplasmic reticulum.: Arch. Biochem. Biophys., 386: 205-212 (2001)
  • Kishimoto K., et al. : Nondestructive quantification of neutral lipids by thin-layer chromatography and laser-fluorescent scanning: Suitable methods for "lipidome" analysis.: Biochem. Biophys. Res. Commun.,13: 521-534 (2001)
  • Maruyama N., et al. : Molecular and structural analysis of electrophoretic variants of soybean seed storage proteins.:Phytochemistry, 64:701-708 (2003)
  • Maebuchi M., et al.: Low resistin levels in adipose tissues and serum in high-fat fed mice and genetically obese mice: development of an ELISA system for quantification of resistin.: Arch. Biochem. Biophys., 416:164-170 (2003)
  • Moriyama T., et al.: Soybean ?-conglycinin diet suppresses serum triglyceride levels in normal and genetically obese mice by induction of ?-oxidation, downregulation of fatty acid synthase, and inhibition of triglyceride absorption. Biosci. Biotechnol. Biochem., 68:357-364(2004)

研究のイメージ

食品成分による脂質代謝の調節に関する研究