研究項目及び実施体制(◎は研究代表者)
- 米の食味特性の解明及び新評価技術の開発
(◎大坪研一/独立行政法人食品総合研究所) - イネ種子貯蔵成分に関する遺伝子新素材の開発と特性評価
(佐藤 光/九州大学大学院農学研究院)
研究の目的
世界の広範な特性の米及び突然変異米を試料とし、イネ種子の貯蔵成分の生合成機構の解明及び各種新遺伝素材の開発を行う。試料米の食味に関する多面的物理化学評価結果及び上記の分子・細胞レベルの基礎的知見に基づいて、米の新食味要因の探索と解明を行い、その結果を活用して新食味評価手法を開発することを目的とした。
研究の内容
世界各国より収集した試料米及び九州大学で独自に開発した受精卵処理法を用いて作出した各種の変異体を試料とし、(1)MNU受精卵処理後代及び在来品種中の貯蔵成分に関する変異の探索、(2)貯蔵成分に関する変異体の遺伝様式の解明、(3)貯蔵成分に関する変異体の生理・生化学的特性の解析、(4)貯蔵成分に関する遺伝子の単離と同定、(5)米飯物理特性の評価、(6)呈味性成分の分析及び新評価手法の開発、(7)米粒微細構造評価技術の開発、(8)米食味関連DNAマーカーの開発とそれらに基づく食味推定技術の開発、(9)米粒半粒を試料とする良食味米選抜技術の開発を行った。これらの研究により、米の新食味要因の解明と新評価技術の開発を行った。
主要な成果
- 新たに貯蔵デンプン及び貯蔵タンパク質に関する変異体1206系統と168系統を作出し、デンプン合成酵素、同枝作り酵素、同枝切り酵素等のデンプン合成関連酵素変異体を単離・同定した。
- タンパク質変異体esp2は胚乳特異的PDI、glup3はVPEの構造遺伝子変異であることを解明した。
- アミロースが共通で、アミロペクチンがインド型あるいは日本型の変異系統を作出し、それらのデンプン特性を比較することによって、アミロペクチンのデンプン特性に与える影響を明らかにした。
- 世界各国の広範な特性の米及び九州大学育成の各種突然変異米の外観特性、米飯物性、呈味性等、食味関連特性を多面的に評価し、試料米の物理化学的特性を明らかにした。
- 低真空SEM画像及び実体顕微鏡画像を混合画像化することにより、米粒の微細構造やタンパク質顆粒の集積状況を観察する技術を開発した。
- デンプン枝切り酵素やグルテリン等、新たに見いだした食味要因に関係するDNAマーカーを作出し、インド型米と日本型米の識別技術とDNA食味判別技術を開発し、半粒試料による良食味系統選抜技術を提案した。
見込まれる波及効果
食味関連遺伝子の単離と機能解明、新食味評価技術とDNAマーカー作出により、育種の効率化が図られるとともに、分子育種・DNA食味選抜が可能になり、今後の良食味米、多様な食味の米の開発が期待される。
主な発表論文
- Nishi A., et al. : Biochemical and genetic analyses of the effects of amylose-extender mutation in rice endosperm. Plant Physiol., 127:1-14(2001)
- Takemoto Y., et al : The rice mutant esp2 greatly accumulates the gluTelin precursor and deletes the protein disulfide isomelase. Plant Physiol., 128:1212-1222(2002)
- Satoh H., et al : Starch Branching Enzyme I-Deficient Mutation Specifically Affects the Structure and Properties of Starch in Rice Endosperm. Plant Physiol., 133:1111-1121(2003)
- Okadome H. et al: Chemometric Formulas Based on Physical properties of Single-cooked rice Grains for Determination of Amylose and Protein Contents. J. Food Sci., 67, 702-707(2002)
- Shimizu N. et al : Application of Visible/Near-infrared Spectroscopy for the Improvement of Amylose Determination Accuracy, Food Sci. Technol. Res., 9, 134-136(2003)
研究のイメージ
