研究の目的
本研究ではカーボンナノチューブ(Carbon Nanotubes: CNT)の電気特性変化を利用した超高感度検出技術と、固体表面修飾技術並びにバイオテクノロジーの融合により、低コストで迅速・高感度に原虫病関連分子を検出する診断装置、特に家畜のトリパノソーマ病関連分子を非侵襲条件で簡便に検出可能な診断装置を開発することを目的とする。
研究項目及び実施体制(◎は研究代表者)
- 原虫用組換え抗原の精製とCNT-バイオセンサーの実用評価
(◎井上 昇/国立大学法人帯広畜産大学原虫病研究センター) - 原虫検出用CNTバイオセンサーの作製と性能評価
(末岡 和久/北海道大学情報科学研究科)
研究の内容及び主要成果
- トリパノソーマ症診断マーカーとなり得る分子を探索する過程で、原虫抗原由来ペプチドの網羅的エピトープマッピング並びに感染特異的サイトカイン応答の精査により、野外診断用マーカーとしてはペプチド抗原よりも完全長組換え抗原が適していること、感染初期のTGFベータレベルが感染抵抗性と関連していることを明らかにした。
- 分子間相互作用によって惹起されるCNTの電気特性変化を検出可能な卓上型CNTバイオセンサーユニットと検出ソフトを独自に開発し、これらを用いて高感度かつ簡便な抗原抗体反応の検出を可能にした。
見込まれる波及効果
本研究で開発したCNTバイオセンサーは従来のELISA法に比し、数千?数万倍高感度であり、検出回路の単純化と最適化によって、携帯型検出装置の開発も可能となる。装置は原虫検出のみならず、ウイルス、バクテリア、環境ホルモン、食品添加物など様々な標的分子の検出に応用が可能であり、これによってもたらされる家畜衛生および公衆衛生上のメリットは非常に大きい。
主な発表論文
- Namangala B., et al. : Effects of exogenous transforming growth factor-beta on Trypanosoma congolense infection in mice. Infection and Immunity 75 : 1878-1885 (2007)
- Namangala B., et al. : Evidence for the immunostimulatory effects of low-dose orally-delivered human interferon alpha in cattle. Journal of Interferon and Cytokine Research 26 : 675-681 (2006)
- Oka H. and Sueoka K. : Spin-polarized scanning tunneling microscopy and spectroscopy study of c(2x2) reconstructed Cr(001) thin film surfaces. Journal of Applied Physics 99 : 08D302 (2006)
- Thekisoe O. M. M., et al. : Evaluation of loop-mediated isothermal amplification (LAMP), PCR and parasitological tests for detection of Trypanosoma evansi in experimentally infected pigs. Veterinary Parasitology 130 : 327-330 (2005)
- Takeda S. et al. : Application of carbon nanotubes for detecting anti-hemagglutinins based on antigen-antibody interaction. Biosensors and Bioelectronics 21 : 201-205 (2005)
研究のイメージ
