生物系特定産業技術研究支援センター

新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業

2009年度 研究成果

臓器老化モデルマウスを用いた機能性食品物質の科学的評価

研究の目的

機能性食品物質の予防食材としての作用を科学的根拠に基づいて実証をするために、臓器老化モデルマウスに対する抗老化作用を指標に個体レベルで機能性食品物質を科学的に評価する。ミトコンドリア酸化ストレスまたは細胞質酸化ストレスを軽減する機能性食材をMn-SODとCuZn-SODの2つの抗酸化酵素の臓器特異的ノックアウトマウスを用いたアッセイ系で100種類の機能性食品物質からスクリーニングする。

研究項目及び実施体制(◎は研究代表者)

  • 臓器特異的Mn-SOD欠損マウスを用いた機能性食品物質の運動機能改善試験
    (◎清水孝彦/地方独立行政法人 東京都健康長寿医療センター)
  • CuZn-SOD欠損マウスを用いた機能性食品物質の病態改善試験
    (◎清水孝彦/地方独立行政法人 東京都健康長寿医療センター)
  • 抗老化作用を持つ機能性食品物質の作用メカニズムの解明
    (◎清水孝彦/地方独立行政法人 東京都健康長寿医療センター)

研究の内容及び主要成果

  • 骨格筋特異的Mn-SOD欠損マウスの強制運動能力を指標にして、機能性食品物質の運動機能改善作用を in vivoレベルで評価し、100種類のスクリーニングを完了した。6種類の陽性物質を同定した。
  • CuZn-SOD欠損マウスの赤血球数、肝機能、骨密度を指標にして、機能性食品物質の病態改善作用を in vivoレベルで評価し、50種類のスクリーニングを行った。その結果、17種類の陽性候補物質を同定し、追試験を進めた結果、2種類の陽性物質を同定した。
  • 骨格筋特異的Mn-SOD欠損マウスが骨格筋中ATPの枯渇により強制運動能力が抑制されることを明らかにした。1の陽性物質は筋中ATP量を増加させる可能性が示唆された。さらにCuZn-SOD欠損マウスが低代謝型骨量減少、コラーゲン減少を伴う皮膚萎縮、および黄体形成不全に伴うプロゲステロン分泌低下による低受胎性を示すことを明らかにした。また、2で同定したビタミンCは骨量減少と皮膚萎縮の表現型を有意に改善した。その改善メカニズムは細胞質活性酸素の発生を顕著に抑制する作用であった。

見込まれる波及効果

本研究の特徴は、細胞質またはミトコンドリアに特定した機能性食品物質の作用点が判明し、機能性食品物質の病態改善効果をin vivoで実証出来ることである。本研究の成果は、作用メカニズムの一端が明らかになるために、機能性食品研究へ有用なin vivoデータを提供できる。また個体レベルでの病態改善作用を持つ機能性食品物質の同定から、疾患予防食材として認知されることで、機能性食品産業がさらに活性化し、経済的貢献も期待できる。

主な発表論文

  • Kuwahara, H., et al.: Oxidative stress in skeletal muscle causes severe disturbance of exercise activity without muscle atrophy. Free Rad. Biol. Med. in press
  • Shimizu, T., et al.: Model mice for tissue-specific deletion of the manganese superoxide dismutase (Mn-SOD) gene. Geriatr. Gerontol. Int. in press
  • Shimijo, Y., et al.: Effect of rosmarinic acid in motor dysfunction and lifespan in a mouse model of familial amytrophic lateral sclerosis. J. Neurosci. Res. 88: 896-904 (2010)
  • Kawakami, S., et al.: Antioxidant, EUK-8, prevents murine dilated cardiomyopathy. Cir. J. 73: 2125-2134 (2009)
  • Murakami, K., et al.: Skin atrophy in cytoplasmic SOD-deficient mice and its complete recovery using a vitamin C derivative. Biochem. Biophys. Res. Commun. 382: 457-461 (2009)

研究のイメージ

臓器老化モデルマウスを用いた機能性食品物質の科学的評価