生物系特定産業技術研究支援センター

新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業

1997年度 採択された研究課題

植物における呼吸調節機構の解明とその機能制御

総括研究代表者氏名及び所属

平井 篤志 (東京大学大学院農学生命科学研究科 )

研究実施期間

平成9年度~13年度(5年間)

研究の趣旨・概要

植物において光合成で合成されたエネルギーは糖として蓄えられる。これを効率的にATPに変換するのがミトコンドリアにおける呼吸である。特に短時間に集中的にエネルギーが必要な雄蕊や成長点に代表される分裂組織などでは、ATPは成長を律速する要因になっている。したがって、限られた貯蔵エネルギーを有効に使用するための呼吸の効率化は作物の稔性に深く関係している。
一方、ミトコンドリアの遺伝情報は、核ゲノムとミトコンドリアゲノムの両方に支配されている。すなわち、呼吸などを司るタンパク質複合体の一部はミトコンドリア内で合成されるが、他のものは核DNAから転写されて細胞質リボソームで翻訳され、ミトコンドリアに輸送される。したがって、ミトコンドリアの呼吸調節機構を解明し、それを制御するためには、核とミトコンドリアの協調発現に関するクロストークを理解することが必要となる。
本研究では、イネやテンサイのミトコンドリアゲノムの構造解析を行うとともに、核ゲノムとミトコンドリアゲノムのクロストークの実態を分子レベルで明らかにすることにより、植物の呼吸関連遺伝子の発現制御、さらにはその呼吸能の統御を目指す。
また、ミトコンドリアゲノムの構造解析から、細胞質雄性不稔遺伝子を同定し、その分子機構を解明することにより、雄性不稔とよく似た現象を示すイネなどの低温による不稔化の分子機構を解明し、これらの人為的制御による冷害の克服への基礎を構築する。

研究項目及び実施体制(( )は研究代表者)

  • 環境応答における核・ミトコンドリアのクロストークの解析
    (東京大学大学院農学生命科学研究科 平井 篤志)
  • 雄性不稔発現の分子機構解明
    (北海道大学農学部 三上 哲夫)

研究のイメージ

植物における呼吸調節機構の解明とその機能制御