生物系特定産業技術研究支援センター

新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業

1998年度 採択された研究課題

病原性低下因子利用による果樹類紋羽病の遺伝子治療

総括研究代表者氏名及び所属

松本 直幸(農林水産省農業環境技術研究所)

研究実施期間

平成10年度~14年度(5年間)

研究の趣旨・概要

果樹類の土壌伝染性病害である紋羽病の防除は、農薬潅注、土壌くん蒸、表土はく離などの一時的抑止策しかなく、効果的で永続性のある環境にやさしい防除法の開発が求められている。
本研究における遺伝子治療では、病原性低下因子(dsRNA)に感染させた弱病原性菌(接種源)を植物根部の強病原性菌(野生株)と接触させ、野生株にdsRNAを感染させることで病気を治療しようとするものである。dsRNAは、病原菌細胞質中に存在する菌類ウイルスに由来する遺伝子で、同系統の菌株間の菌糸融合によってのみ移行し、病原菌の活力を低下させる機能をもっている。本研究では、1)治療効果の高いdsRNAの探索・評価を行い、その分子的機能を解明する。2)種々の系統の強病原性株への効率的なdsRNA導入法を開発する。3)広範囲な細胞質に和合性を有する接種源(ユニバーサルイノキュラム)の作成を行う。
dsRNAは病原菌の細胞質中でのみ定着・増殖するので、本治療法の効果は半永久的で、他の生物に拡散することはないクリーンな防除法であるのみならず、その経済効果も極めて大きい。

研究項目及び実施体制(( )は研究代表者)

  • 病原性低下因子の探索と評価
    (農林水産省農業環境技術研究所 松本 直幸)
  • 病原性低下因子導入技術の開発
    (農林水産省果樹試験場 吉田 幸二)
  • 病原性低下因子の分子学的機能解明
    (農林水産省果樹試験場 大津 善弘)
  • ユニバーサルイノキュラムの開発
    (広島県立大学生物資源学部 森永 力)

研究のイメージ

病原性低下因子利用による果樹類紋羽病の遺伝子治療