生物系特定産業技術研究支援センター

新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業

1999年度 採択された研究課題

遺伝子導入飼料作物を用いた新しい家畜疾病予防法の開発

総括研究代表者氏名及び所属

松本 安喜 (東京大学大学院農学生命科学研究科)

研究実施期間

平成11年度~15年度

研究の趣旨・概要

家畜感染症に対するワクチン投与は、不活化ウイルスの接種、弱毒化ウイルスの接種または経口投与によるが、その煩雑さとコストの低減が課題となっている。また、感染症予防のため、飼料に添加される抗生物質の食肉への残留が問題となっている。一方、野生イヌ科動物や野犬は、狂犬病などの感染症に対する感受性がありながら、ワクチン接種は困難であり、国際的にも大きな課題となっている。
本研究では、病原体に由来する感染防御抗原遺伝子を導入した組換え飼料作物を用いた、安価で安全な経口免疫法の開発のための基礎的研究として、1)ブタ回虫等、重要な病原体の遺伝子より、組換え抗原蛋白を大腸菌で産生し、その接種により感染防御免疫を誘導するものを選抜する。2)狂犬病ウイルスG蛋白遺伝子等、既に他の発現系で感染防御免疫を誘導することが明らかな遺伝子及び1)で効果の認められた感染防御抗原遺伝子を飼料作物に導入する。さらに、

(a)病原体抗原と同時投与することで宿主免疫システムを活性化する(アジュバント)効果が期待されるサイトカイン
(b)動物等に由来する抗菌ペプチドの遺伝子

を飼料作物に導入する。3)飼料作物における目的蛋白産生効率の向上を目指し、植物形質転換ベクターの改良を行う。

4)作製した組換え飼料作物を動物に経口投与し、抗体産生等の免疫増強効果及び病原体感染実験による感染防御効果を検討する。

本研究の成果は、より安価で安全な食肉の産生及び野外動物への免疫法の開発に大きく貢献するものと期待される。

研究項目及び実施体制(()は研究代表者)

  • 遺伝子導入飼料作物の作成およびサイトカイン導入効果の検討
    (東京大学大学院農学生命科学研究科 松本 安喜)
  • 液性免疫活性化を促すコレラ毒素A/B鎖遺伝子と家畜病原体感染防御遺伝子の融合遺伝子作成及びその組換え植物による翻訳産物の生化学的・免疫学的解析
    (琉球大学医学部 新川 武)
  • 家畜感染症防御抗原の探索および遺伝子導入飼料作物を用いた家畜疾病予防法の宿主動物を用いた効果検定
    (農林水産省家畜衛生試験場 辻 尚利)

研究のイメージ

遺伝子導入飼料作物を用いた新しい家畜疾病予防法の開発