生物系特定産業技術研究支援センター

新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業

2001年度 採択された研究課題

家畜とヒトの炎症性腸疾患の発生機序と関連性の解明

総括研究代表者氏名及び所属

百溪 英一
百溪 英一(独立行政法人 農業技術研究機構動物衛生研究所)

研究実施期間

平成13年~平成17年(5年間)

研究の趣旨・概要

家畜の炎症性消化器疾患のなかで、現在我が国で最も大きな経済的問題となっているのはヨーネ菌に起因し慢性下痢を主徴とするウシヨーネ病である。そして本病関連の問題として、ヒトの炎症性腸疾患の一種であるクローン病との類似点が指摘されてきた。クローン病は原因不明の厚生労働省指定難病疾患であるが、海外ではクローン病患者の組織からヨーネ菌が分離されたという報告もあるものの例数は少なく、依然としてヨーネ菌との関連性について結論は出されていない。
このことから、本研究では家畜のヨーネ病、実験動物におけるクローン病再現モデル、さらにヒトクローン病組織材料を用い、消化管に生じる様々な病態を、ゲノム科学の手法を用いて解明し、ヨーネ病とクローン病との異同を明らかにする。腸組織の上皮細胞、免疫細胞、平滑筋などの構成細胞のネットワークを機能と形態から比較する。特に、腸の運動系における常在型マクロファージや粘膜系におけるM細胞などの様々な免疫系細胞については、病理学的位置づけや生理機能が十分明らかでないことから重点的に解明を行う。これら基礎研究から得られた2つの疾病の病態を比較して両者の病理発生を明らかにする。
また、本研究では消化管の病態解明のために、最新の免疫病理や免疫薬理の技術を用いるとともに、世界に先駆けてDNAチップなどによるトランスクリプトーム解析の手法や遺伝子欠損動物などを用いて遺伝子レベルでの解明も行ない目的を達成する。

研究項目及び実施体制(( )内は研究代表者)

  • ウシヨーネ病とヒトの炎症性腸疾患における粘膜環境維持機構の解明
    (独立行政法人 農業技術研究機構 動物衛生研究所 百溪 英一)
  • ヒトクローン病と家畜の炎症性腸疾患における消化管運動機能障害機構の解明
    (東京大学大学院農学生命科学研究科 尾崎 博)

家畜とヒトの炎症性腸疾患の発生機序と関連性の解明