生物系特定産業技術研究支援センター

新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業

2004年度 採択された研究課題

シロアリの卵運搬本能を利用した駆除技術の開発

研究代表者氏名及び所属

松浦 健二
松浦 健二
(岡山大学大学院自然科学研究科)

研究実施期間

平成16年度~20年度(5年間)

研究の趣旨・概要

シロアリの職蟻は女王蟻の産んだ卵を育室に運搬して保護(グルーミング)をするとともに他のシロアリと栄養交換する習性をもつ。
本課題は、シロアリの持つこの習性を利用して、殺虫成分や孵化阻害成分を含ませた基材に卵認識物質を塗布した擬似卵を巣内に運搬させ、卵の保護や栄養交換を通じて、これら殺虫成分をコロニーの中枢に効率的、高精度に浸透させ、巣全体を短期間で破壊する世界初の駆除技術の開発を目的とする。
本研究の生態学的ベースは、昆虫と糸状菌の共生関係の発見にある。即ち、新種のAthelia属の菌核菌は、シロアリの卵に物理的・化学的に擬態した菌核を作り、卵運搬本能を巧みに利用して運搬、保護させ、シロアリをコントロールしている。この卵擬態を利用した画期的な害虫管理システムを確立するためには、シロアリの卵認識物質の同定が鍵となるが、野外コロニー卵や女王蟻の付属腺からの採取に加え、特に共生関係にある卵擬態菌核菌の単離培養と遺伝子解析等により、分析に必要十分な質と量の材料を確保する。卵運搬・保護行動はシロアリの種に関わらず普遍的な社会行動であり、本駆除技術が実現できれば、殺虫剤の大量散布や毒餌による既存の駆除法よりも格段に効率的にコロニーを駆除でき、安全かつ経済的であるため、日本だけでなく世界のシロアリ駆除技術を刷新すると期待される。

研究項目及び実施体制(()は研究担当者)

  • シロアリの卵認識物質の化学分析および卵運搬バイオアッセイ
    (国立大学法人岡山大学農学部 松浦 健二)
  • 卵擬態菌核菌の単離培養およびrRNA遺伝子分析
    (国立大学法人岡山大学農学部 松浦 健二)
  • 擬似卵駆除剤のフィールド評価
    (国立大学法人岡山大学農学部 松浦 健二)

研究のイメージ

シロアリの卵運搬本能を利用した駆除技術の開発