ポイント
- 無花粉スギの苗を組織培養で短期間に大量に生産する技術の開発に成功しました。
- 将来的には林業に適した新たな無花粉スギの品種開発の効率化が期待できます。
概要
生研支援センターでは、農林水産業や食品産業の分野で新事業の創出や技術革新を目指す研究に資金を提供しており、得られた研究成果を広く知っていただくため、研究成果を分かりやすく紹介する取組を実施しています。
今回、紹介するのは、無花粉スギの苗を大量に生産する研究成果です。
スギ花粉症は、国民の4割が罹患しているといわれており、毎年春にはスギ林から飛散する大量の花粉により、多くの国民が悩まされています。そこで、花粉を全くつけない無花粉スギを植林し、花粉の飛散量を抑えることで花粉症を減らす取組が行われています。このため、無花粉スギの苗を大量に生産・供給する技術の開発が求められています。
現在の無花粉スギの苗生産手法では、生産した苗が無花粉であることを確認するためには2~3年かかり、しかも生産した苗の約半分は花粉をつけるため、苗の生産効率が低いことが課題となっています。このため、新潟大学を代表機関とする研究グループは、無花粉スギの原因遺伝子に着目し、無花粉かどうかをDNAで容易に判定する技術を開発しました。さらに、本技術を利用することで、未熟種子由来のカルス(※)から無花粉となる遺伝子を持つ細胞を選別し、それらを組織培養することで、無花粉スギの苗を大量に生産する技術を確立しました。本研究で得られた成果は、林業に適した新たな無花粉スギ品種の効率的な開発にも貢献するものと期待できます。
(用語)
カルス : 植物体の組織の一部を切り取り、培地上で人工培養し、増殖させた無定形の植物細胞の塊。
詳しい内容は以下のURL又は別紙をご覧ください。
https://www.naro.go.jp/laboratory/brain/contents/fukyu/episode/episode_list/154578.html
これまでに紹介した研究成果は以下のURLをご覧ください(全39話掲載)。
https://www.naro.go.jp/laboratory/brain/contents/fukyu/episode/index.html