ポイント
- 1世帯当たり緑茶購入数量は、2008年と比較して約3割減っています。一方、米国やEU等では日本食ブームなどの影響により、抹茶など粉末状の緑茶や有機栽培茶の需要が拡大、2024年の緑茶の輸出額は約364億円で、2014年の約4.7倍に増えています。
- このようなニーズに対応し、抹茶・粉末茶への適性が高い新品種「せいめい」が育成され、取り扱いの容易なセル苗の増産態勢も確立、全国の129.6 haで栽培されています。
概要
生研支援センターでは、農林水産業や食品産業の分野で新事業の創出や技術革新を目指す研究に資金を提供しており、得られた研究成果を広く知っていただくため、研究成果を分かりやすく紹介する「成果事例こぼれ話」を作成・公表しています。
今回紹介するのは、農研機構果樹茶業研究部門を代表機関とする研究グループが、抹茶・粉末茶に適した新品種「せいめい」を育成するとともに、取り扱いの容易なセル苗の増産態勢を確立し、全国の129.6 haで栽培されるまでに普及が進んでいる事例です。
国内では1世帯当たりの緑茶(リーフ茶等)購入数量は、2008年と比較して約3割減っています。一方、米国やEU(欧州連合)等では、日本食ブームの影響や健康志向の高まりにより、ラテ飲料やスイーツの原料となる抹茶など粉末状の緑茶や、有機栽培茶の需要が増加しており、欧米向け輸出が拡大しています。農水省の発表によると、2024年の緑茶の輸出額は約364億円となり、2014年の約78億円から約4.7倍に増えています。
研究グループでは、このようなニーズの変化に対応するため、抹茶・粉末茶への適性が高く、色・香味に優れ、病害にも強い新品種「せいめい」を育成するとともに、取り扱いが容易で機械での植え付けも可能なセル苗による増産態勢を確立しました。現在の主要品種である「やぶきた」の後継品種の一つとしても有望視されています。
2023年度における「せいめい」の栽培面積は全国で129.6 ha、主産地の鹿児島県では2024年度中に100 haに達する見込みです。「せいめい」は、農研機構が育成した茶品種で初めて外国での品種登録出願を行い、海外輸出に向けた取り組みを進めています。農研機構は「日本茶海外輸出に資する緑茶用新品種「せいめい」栽培・加工技術標準作業手順書」を公開し、品種と技術の普及に取り組んでいます。新品種「せいめい」は茶農家の収益向上、輸出の拡大に貢献し、21世紀の日本茶業を支える品種の一つとして期待されています。
詳しい内容は以下のURLまたは別紙をご覧ください。
https://www.naro.go.jp/laboratory/brain/contents/fukyu/episode/episode_list/168393.html
これまでに紹介した研究成果は以下のURLをご覧ください(全62話掲載)。
https://www.naro.go.jp/laboratory/brain/contents/fukyu/episode/index.html