畜産研究部門

小規模移動放牧による耕作放棄地の畜産的利用

農地の回復・保全と肉用繁殖牛飼養の低コスト化・省力化を図るために、小面積で分散した複数の耕作放棄地を組み合わせ放牧牛を移動させて利用する「小規模移動放牧」を開発し、現地実証試験、マニュアルの発行等により普及推進に努めた。

背景

過疎化および農業従事者の高齢化に伴い、中山間地を中心に耕作放棄地が増加している。耕作放棄地は景観を損ねるだけでなく、獣害の増加、周辺環境への悪影響、生産意欲の低下などの要因にもなっており対策が求められている。

目的

耕作放棄地による弊害を防止し、家畜生産に利用するため、分散した複数の小区画の耕作放棄地を活用した肉用繁殖牛の放牧飼養技術の体系化を図る。

成果

  • 分散した複数の小区画(20~50a)の耕作放棄地を移動しながら肉用繁殖牛を放牧する小規模移動放牧技術を開発した。
  • 小規模移動放牧を体系化するための個別技術として、電気牧柵・給水施設の低コスト化を実現するとともに、牧草地の簡易造成技術、ASP草地(Autumn saved pasture、夏季の利用を制限して備蓄し秋以降に利用する草地)利用技術、低床式家畜運搬車、不凍水槽、などの開発を行った。
  • 小規模移動放牧技術は利用目的や技術レベルにより、以下の3つの形態に大別できる
    • 耕作放棄地の省力的な管理を主目的として野草地をそのまま利用する形態
    • 家畜生産性の向上を目的として寒地型牧草地化して利用する形態
    • 放牧期間を延長するために牧草地と野草地を組み合わせて利用する形態
    それぞれの形態毎に肉用繁殖牛1頭あたりの必要面積を実証的に明らかにした。

図

研究の今後

安定的に放牧期間を延長できる技術を確立するとともに放牧利用と作物栽培との輪作技術を開発する。さらなる技術の普及により、飼料自給率の向上、飼養管理の省力化、農作物への獣害の回避、景観改善などの中山間地の住環境の改善、などが実現する。