土壌が湿潤なため牧草が生育しにくい水田跡地で、栽培ヒエを用いて放牧期間を延長する技術を開発した。また、小面積放牧の栄養上の利点を明らかにし、放牧開始時の疾病発生、家畜を集める際の労力など放牧の部分的なデメリットを解消するための技術開発を行った。
背景
自給飼料を活用する省力的な畜産技術として放牧が再評価され、多様な放牧形態に対応する技術開発が望まれている。特に水田跡地は飼料生産の場としての利用と同時に、放牧利用面積が急速に拡大している。
目的
水田跡地での放牧を可能とする技術開発を行うとともに小面積放牧の栄養上の利点を解明し、さらに放牧の弱点である家畜の損耗、集畜の困難さを解消するための技術開発を行う。
成果
- 湿田跡地では栽培ヒエを利用:
放牧草は草丈が短い状態で利用すると蛋白質成分が高いため、搾乳牛1頭当り10アール程度の小面積の放牧でも濃厚飼料が節減できる。 - 小面積の放牧でも蛋白質の補給地:
栽培ヒエは湛水状態でも生育し牛の嗜好性も高いことを明らかにし、水田跡地など湿潤な放牧地への導入が有効であることを実証した。また、イタリアンライグラスを追い播きすることにより晩秋と早春の放牧が可能となり肉用牛の放牧期間を延長できる。 - 馴らし放牧で病気発生を抑える:
放牧開始時には環境が急変するので放牧牛の呼吸器免疫能が低下する。放牧開始前に野外での群飼による馴致を行うことで、呼吸器系疾病の発病率や増体の停滞を抑えることができる。 - 音楽学習で放牧牛の捕獲を容易に:
予め異なる音楽学習を行うことにより、放牧牛を分別して誘導することができる。軽トラックに簡易な装備をつけることで、誘導した牛の捕獲が容易となる。
研究の今後
家畜の健全性や牛乳の高付加価値化に対する放牧の効果を検証することにより、府県での放牧酪農の推進を支援する。