畜産研究部門

食肉の熟成における筋タンパク質分解機構の解明

「筋肉」が軟化し呈味性が向上して「食肉」となるためには熟成過程を必要とする。より高品質な食肉生産のために、熟成期間中に分解される牛肉トロポニンTタンパク質を対象として、アイソフォーム配列の決定とアミノ酸配列切断部位の特定を行い、呈味性ペプチドの生成機構を解明した。

背景

食肉は一定の熟成期間をおくことで食用に適した食感と食味をもつようになる。この間に筋肉の構造基本単位である筋原線維(タンパク質)は酵素によって分解され、筋組織の軟化が進行するとともに、呈味性ペプチドが生成してくる。その機構を明らかにし、制御することで、より高品質の食肉を生産することが可能となる。

目的

熟成期間中に特徴的に分解される筋タンパク質トロポニンTの分解機構および呈味性ペプチドの生成過程を解明し、より高品質な食肉生産を実現する。

成果

  • 牛肉中にトロポニンTの分子多型(アイソフォーム)が10種存在することを明らかにし、その一次構造を決定した。
  • 牛肉熟成中に分解されるトロポニンTアイソフォーム分子の切断部位をアミノ酸配列で明らかにし、トロポニンTがアイソフォーム特異的に断片化される機構を明らかにした。
  • と畜後間もない牛肉は乳酸により酸性を示すが、断片化されたトロポニンTには酸味抑制ペプチドが含まれていることを明らかにした。このトロポニンT由来の酸味抑制ペプチドが牛肉の呈味性発現に関与するものと考えられる。
  • 以上の成果は牛肉の熟成機構の重要な基礎的知見を得たものであるとして平成18年度日本農学進歩賞を受賞。

図

 

研究の今後

食肉の熟成度が簡易に判定出来るように、トロポニンTの分解を指標とする熟成度判定技術を開発する。