生物系特定産業技術研究支援センター

《こぼれ話1》陸上養殖のバナメイエビ誕生

~ 九州で画期的な持続可能な陸上養殖システム ~

2020年3月2日号

SDGs目標9.産業と技術革新の基盤をつくろう SDGs目標13.気候変動に具体的な対策を SDGs目標14.海の豊かさを守ろう

白姫 (しらひめ) えびの誕生

冷凍エビといえば、輸入品を連想しがちですが、実は、いまでは家庭でおなじみのバナメイエビも国内の陸上施設で安定して養殖できるようになってきました。

バナメイエビの稚エビから成エビまでの屋内陸上養殖の事業化試験を進めているのは日本水産株式会社です。ハワイから親エビを輸入し、大分県佐伯市の施設で採卵・ふ化させて稚エビを作り、そのあと鹿児島県南九州市の施設へ移し、出荷サイズの約20gまで育てています。現在、通販サイトでも販売しています。

環境にもエビにもやさしいバイオフロック法

陸上養殖のカギを握るのはバイオフロック法です。池の中で微生物の集合体 (バイオフロック) を浮遊させながら、水質を浄化させ、エビを飼育する方式です。屋内の陸上養殖のため、外界からの病気の侵入を防ぐことができ、水の入れ替えをできるだけ少なくして飼育できるメリットがあります。バナメイエビは水中を泳ぐ習性 (写真下左・日本水産株式会社提供) があり、池や水槽の水中を立体的に効率よく使うことができます。海外でのエビの養殖は、河口近くのマングローブ林を伐採して養殖池をつくるなど環境への影響が大きい一面もありますが、陸上養殖なら、環境への負荷も少なく、持続可能な生産システムといえます。

鮮度が高く、高品質

鹿児島県の施設で水揚げされたバナメイエビは、高鮮度の状態で店や食卓に届けられます。鮮度がよいだけでなく、甘みもあり、刺身や寿司のネタにもなります。現在、「白姫えび」というブランド名でワタミ株式会社が展開する居酒屋「ミライザカ」のメニュー (写真右) にも採用されています。将来的には鮮度の高い国産ものが普及することも夢ではないようです。バナメイエビの国産化を目指す陸上養殖研究は、農研機構生研支援センターの研究資金を活用して行われました。

水中を泳ぐバナメイエビ
水中を泳ぐバナメイエビ
居酒屋「ミライザカ」のメニュー
居酒屋「ミライザカ」のメニュー

事業名

革新的技術創造促進事業(事業化促進)

研究課題名

高鮮度国産エビ生産のための効率的無換水養殖技術の実証研究

研究期間

平成27年度 ~ 平成29年度

研究実施機関

日本水産株式会社


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こぼれ話の①~⑱は日本語と英語で読めます。その18話を冊子『日本の「農と食」 最前線-英語で読む「研究成果こぼれ話」』にまとめましたのでご覧ください。