生物系特定産業技術研究支援センター

《こぼれ話2》遠隔操作のリモコン草刈り機

2020年3月16日号

SDGs目標3.すべての人に健康と福祉を SDGs目標8.働きがいも経済成長も SDGs目標9.産業と技術革新の基盤をつくろう

草刈り重労働を軽減

たかが草刈りと侮ってはいけません。農地周辺での草刈りは、害虫被害の抑制や農道確保のために欠かせません。

ところが、現在、仕事として自営農業に従事している基幹的農業従事者約140万人のうち、65歳以上の高齢者が98%も占めます (2019年の数値・農水省の農業構造動態調査)。高齢者にとって、草刈り作業は思いのほか重労働です。日本の農業が元気よく活気づくためにも、安全で効率のよい草刈り方法が求められています。

そういう中、岡山県里庄町の「三陽機器株式会社」が開発した「リモコン草刈り機」(写真左下・三陽機器株式会社提供) が大活躍しています。

現在、よく使われている草刈り機は、刈払機といって、長いアームの先端に設置された回転刃で草を手動で刈り取る方式です。しかし、振動や音が激しく、作動中に体がぶるぶる振動して、作業者への負担がとても大きい問題があります。しかも人が作業しにくい急斜面の畦や法面では、体のバランスを崩して滑ったり、転倒したりして、回転刃で足を切る危険性が常に伴います。

安全で効率がよく、操作は簡単

リモコン操作なら、そういう心配はありません。200m 離れたところからでも遠隔操作でき、身体に危険はありません。しかも最大40度の急傾斜地でも草刈りが可能です。さらに前後に自由に走行できるため、可動範囲も広く、作業者が動きにくい水田の畦や河川の土手、人が入りづらい空間、道路わきの長い法面でも容易に草刈りができます。草を刈る作業スピードは速く、場所にもよりますが、約300平方メートルの斜面を30分程度で刈り取れます。


急傾斜地で作業するリモコン草刈り機

リモコン操作を体験している農業者

農地以外でも、作業者が入りにくい太陽光発電パネルの下にも潜って草を刈ることができ、重宝されています。つまり、「作業者に安全」「作業効率が高い」「操作が簡単」という3つの特色をもっています。

学会主催のセミナーで実演

実演の出番も多い。2019年8月には広島県東広島市で「草刈り作業のスマート化から中山間地域農業の将来を考える」と題して開かれたオープンセミナー (主催は中山間水田スマート農業活用実証コンソーシアム) で実演しました。2020年1月15日には神奈川県川崎市のJAセレサ主催の「農業機械の安全講習会」でも実演し、農業者が実際に操作しました (写真右)。「こんな便利な草刈り機があるのは初めて知りました。とても魅力的です」と好評でした。

リモコン草刈り機は農研機構生研支援センターの研究資金を活用して開発され、2018年4月から販売が始まりました。草刈り機の重量は200kg (全長126cm、幅117cm、高さ68cm) で価格は152万9550円 (メーカーの希望小売価格・税込) です。現在50台以上が北海道、宮城、長野、三重、岡山、鳥取、広島、徳島、福岡など全国で活躍しています。

事業名

革新的技術創造促進事業 (事業化促進)

研究課題名

自律走行式小型エンジン草刈機の商品化

研究期間

平成26年度 ~ 平成28年度

研究実施機関

三陽機器株式会社 (岡山県里庄町)


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