生物系特定産業技術研究支援センター

《こぼれ話24》炭酸ガス施用でハウス作物が増収

2021年5月21日号

SDGs目標2.飢餓をゼロに SDGs目標8.働きがいも経済成長も

日本の施設園芸は生産者の高齢化や暖房に要する燃料の価格高騰などの影響で縮小傾向にあります。そうした中、高知県の施設園芸では植物の光合成を促す炭酸ガス(二酸化炭素)を発生させる装置を導入する農家が増え、ナスやピーマンなど多くの作物で増収が実現しています。炭酸ガス施用技術のように、作物の増収を目的とした環境制御技術が今後ますます増えていきそうです。

高知県ではピーマン生産ハウスの6割に炭酸ガス発生装置が普及

高知県はナスの生産量が日本一、ピーマンも全国第3位の産地です。中でも土佐市や安芸市一帯はナスやピーマンの産地として知られています。高知県のハウスではピーマンの栽培面積の約6割、ナスの約3割に炭酸ガス発生装置が導入されています。

炭酸ガス発生装置のあるナスのハウスに入ってみましょう。大型の送風機がついた緑色の箱型装置があります。これが炭酸ガス発生装置(写真1)です。灯油を燃やして発生させた二酸化炭素の濃度の高い燃焼ガスを、丸いトンネルのようなポリフィルム製ダクトを通じてハウス内に送り込みます。

ナスの根元付近を見ると、直径2mm程度の穴の開いた丸いポリフィルムが地面をはうように並んでいます(写真2)。この穴から二酸化炭素が吹き出てくる仕組みです。

写真1 :炭酸ガス発生装置(高知県農業技術センター提供)

温度管理にも目配り

植物は水と光と炭酸ガス(二酸化炭素)で光合成を行い、成長しますが、密閉されたハウス内は二酸化炭素が不足しがちになります。そこでハウス内の二酸化炭素の濃度を人工的に高めて、ナスやピーマンなどの収量を上げようというのが炭酸ガス施用技術の狙いです。

農家は二酸化炭素の施用だけでなく、温湿度センサーなどを見ながら「午前は早めに換気しながら徐々に温度を上げていき、午後は温度を落とさない」など温度や光の管理にも目を配りながら栽培します。

ナスやピーマンで増収増益

高知県農業技術センターによると、こうした炭酸ガス施用技術を取り入れた環境制御技術によって、ナス、ピーマン、シシトウ、キュウリ、ニラ、トマト、ミョウガの主要7品目で7~40%の増収が実現できました(2016~2018年の実証効果研究結果)。いまでは主要7品目のハウス面積の約5割に環境制御技術が普及しています。

炭酸ガス発生装置の導入に10a規模のハウスで1台あたり約60万円かかりますが、ダクトファンの導入コストを勘案しても、農家の手取り所得は増加すると報告されています。たとえば、ピーマンのモデル農家で、販売単価が高い冬季(12~3月)に10aあたりの収量が約8.5tから12tへと4割近くも増え、収益が10a当たり約80万円増えた例もあります。

写真2:ナスの根元付近を通るポリフィルム製ダクト(高知県農業技術センター提供)

炭酸ガス施用技術が普及した背景

高知県の施設園芸で炭酸ガス施用技術が普及した背景には、2012~14年に実施された研究「中小規模園芸ハウスを対象とした複合エコ環境制御技術の確立」の実績があります。

この研究は宮内樹代史・高知大学准教授(農業環境工学)らが中心となり、主に太陽熱を活用したハウス冷暖房システム(自然冷媒ヒートポンプ給湯機と蓄熱層を組み合わせた冷暖房装置)と炭酸ガス施用技術を組み合わせて、ハウス内の環境を制御することで、ピーマンなどがどれくらい増収できるかを検証するものでした。研究の結果、ピーマンでは2割前後の収量増加が実現できました。こうした成果が刺激となって、炭酸ガス発生装置を導入する農家が増えていきました。宮内准教授は「ヒートポンプの冷暖房システムはコストが高く導入は進まなかったが、炭酸ガス発生装置はコストを大きく上回る利益があることが分かり、いまではハウス農家にとって必須のアイテムとなった」と複合エコ環境技術の研究によって炭酸ガス施用技術が普及促進したと話しています。

今後、高知県で成功した環境制御技術が全国に普及していくことが期待されています。

事業名

農林水産業・食品産業科学技術研究推進事業(実用技術開発ステージ)

事業期間

平成24年度~平成26年度

課題名

中小規模園芸ハウスを対象とした複合エコ環境制御技術の確立

研究実施機関

高知大学、高知県農業技術センター等


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