ポイント
- 日本産のサツマイモ(かんしょ)は海外で人気がありますが、海上輸送で輸出先に到着後に腐敗が見つかり、経済的損失が発生していました。
- 輸出時の腐敗低減のために、高温キュアリング技術の実用化、腐敗リスクのあるイモを人工知能(AI)による画像解析で出荷前に除外する技術の開発等を行いました。
- 高温キュアリング等の技術を標準作業手順書にまとめ、生産者、輸出事業者などに普及を進めています。
概要
生研支援センターでは、農林水産業や食品産業の分野で新事業の創出や技術革新を目指す研究に資金を提供しており、得られた研究成果を広く知っていただくため、研究成果を分かりやすく紹介する「成果事例こぼれ話」を作成・公表しています。
今回紹介するのは、農研機構を代表機関とする研究グループが、戦略的スマート農業技術等の開発・改良事業に採択された課題において、サツマイモ輸出時の腐敗低減技術を開発し標準作業手順書にまとめ、2024年3月から生産者や輸出事業者に提供を開始、普及を進めている事例です。
日本産のサツマイモは、甘みが強く高品質なため海外でも人気があり、香港やタイなどアジアを中心に輸出が伸びています。財務省貿易統計によれば、2024年におけるサツマイモ(加工品を除く)の輸出量は約7,400トン、輸出金額は約33億円となり、金額ベースでは直近10年間で約9倍に増えています。ただ、特に冬期の海上輸送中にサツマイモが腐敗するという問題があり(農研機構の調査によれば腐敗率は平均約25%)、大きな経済的損失とフードロスが発生していました。
そこで農研機構を代表機関とする研究グループは、輸出事業者、生産法人などと連携して輸送中の腐敗低減技術の開発に取り組み、イモを一定の高温・高湿度条件下に置くことで腐敗を抑制する高温キュアリング技術の実用化、腐敗リスクのあるイモを人工知能(AI)により除外する技術の開発等を行いました。2022年度には、宮城県から香港へ輸出する実証試験を行い、安定的に「腐敗率5%以下」とすることに成功しました。高温キュアリング技術の詳細や導入事例については標準作業手順書として取りまとめ、2024年3月から提供を開始、輸出事業者などに既に約100冊を配布し、技術の普及を進めています。
詳しい内容は以下のURLまたは別紙をご覧ください。
https://www.naro.go.jp/laboratory/brain/contents/fukyu/episode/episode_list/170210.html
これまでに紹介した研究成果は以下のURLをご覧ください(全65話掲載)。
https://www.naro.go.jp/laboratory/brain/contents/fukyu/episode/index.html